- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/09/06
- メディア: 文庫
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忽然と出現した修行僧の屍、山中駆ける振袖の童女、埋没した「経蔵」…。箱根に起きる奇怪な事象に魅入られた者―骨董屋・今川、老医師・久遠寺、作家・関口らの眼前で仏弟子たちが次々と無惨に殺されていく。謎の巨刹=明慧寺に封じ込められた動機と妄執に、さしもの京極堂が苦闘する、シリーズ第四弾!
長かった。文庫本で1340ページあまり。これだけ厚いと、電車やバスの中で片手で持って読むのは結構つらい。4冊にした分冊文庫版も出ているが、そっちで読むのはなんとなく「負け」のような気がする。
長いだけでなく、いつものように密度も濃い。今回は「禅」が主題。途中、禅の歴史・成り立ちに関するウンチクが京極堂により延々繰り広げられる。この作品の謎解き・憑物落としには必要なことである。内容については解説(ネタバレがあるので読後に読むべし)で宗教学者の正木晃氏が太鼓判を押しているぐらいなので、禅に関するわかりやすい解説書にもなっているのだと思う。
理解できない会話のことを「禅問答のようだ」と形容することがあるように、禅はわかりにくいものだというイメージがあるが、ちょっとだけわかった気がした。この作品で「解ることと解った気がすることは同じだが、解っているからと云って解った気がしているだけでは、解っていないのとも同じだ」と語られているが。
ストーリーは第1作「姑獲鳥の夏」とからんでいるところがあり、再登場する人物もいる。忘れてしまっていることが結構あったので、「姑獲鳥の夏」を部分的にザッと読み返すことになってしまった。
この犯人の手口の理由や動機を推理するのは常人には無理だと思う。ただただ「そういうことだったのか」と思うのみである。いつものきめゼリフ「この世には不思議なことなど何もないのだよ」の通り、最後には全てが明かされ(本当は不思議なままの点も若干あったけど)、スッキリしていてかつ悲しさの残る終わり方だった。
この作品を読んで、ますます中禅寺敦子(京極堂の妹)のファンになってしまった。コミック「魍魎の匣」でのハンチングをかぶった彼女もイメージと合う。
「森博嗣のミステリィ工作室」とこの作品を読んでわかったことがある。「封印再度」(森博嗣)の各章の英語タイトル(例: 第1章 鍵は壺のなかに
次はこの作品と同じくらい長い「絡新婦の理」が待っている。その量と密度に立ち向かう気にまたなったら読むとしよう。