- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/09/05
- メディア: 文庫
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当然、僕の動きも読み込まれているのだろうな―二つの事件は京極堂をしてかく言わしめた。房総の富豪、織作家創設の女学校に拠る美貌の堕天使と、血塗られた鑿をふるう目潰し魔。連続殺人は八方に張り巡らされた蜘蛛の巣となって刑事・木場らを眩惑し、搦め捕る。中心に陣取るのは誰か? シリーズ第五弾。
前作「鉄鼠の檻」に続いて、この作品も文庫本で1300ページ超。盆休みを活用して読む。さすがに時間はかかるが、読み始めれば引き込まれてしまうので、読む前に思うほど大変ではない。
まず、始まり方が目をひく。「あなたが―蜘蛛だったのですね」。この導入部をずっと頭に置きながら1300ページを読むことになる。
巻末の解説でも書かれている通り、シリーズの総まとめ的な作品(後続作でどういう展開になるのかは知らないのだが)であり、以前の作品での事件や登場人物もからんでくる。おまけに話が相当に入り組んでいるので、全てを覚えておくことができず、前に戻って読み返すことが何度もあった。
「鉄鼠の檻」に比べ、事件の描写が増えてその分ウンチクが少なくなった印象。それでも、キリスト教、フェミニズム、日本の「家」のあり方など、京極堂によって語られるウンチクは多岐に渡る。
真犯人「蜘蛛」の奸計は大規模かつ複雑で、誰もが例外なく踊らされる。これには終始圧倒された。反面、ちょっと風呂敷を広げすぎという感もあり。大規模な分、切れ味鋭いタイプの作品ではなくなっていると思う。まあそれもあくまで、「魍魎の匣」のようなすごい切れ味の作品と比較すれば、ではある。
「森博嗣のミステリィ工作室」で森博嗣は以下のように語っている。
この『絡新婦の理』は、今はもう出版されてしまった犀川と西之園シリーズのある作品の構想だけが頭にあるときに読んでしまって、その作品とプロットが酷似していたので、弱りました。多少変えて書かないとまずいな、と思いました。
「ある作品」とはS&Mシリーズのどの作品のことか。上記からわかるのは
- 「絡新婦の理」よりも後に刊行された作品
- 元々プロットが酷似していたのだから、その痕跡が残っているはず
- 作品名を伏せるということは、似ているという事実がネタバレになるのでは?
ストーリーから思い当たる作品があったのだが、刊行時期が早くて1.に合致しない。「『今はもう』出版されてしまった」という言い方が「今はもうない」を指し示しているのかとも思ったが、プロットが似ていたという痕跡は読み取れない。謎である。