久しぶりに道尾作品を読んだ。未読の中で一番古いのを、ということで、2006年の作品。
盗聴専門の探偵、それが俺の職業だ。目下の仕事は産業スパイを洗い出すこと。楽器メーカーからの依頼でライバル社の調査を続けるうちに、冬絵の存在を知った。同業者だった彼女をスカウトし、チームプレイで核心に迫ろうとしていた矢先に殺人事件が起きる。俺たちは否応なしに、その渦中に巻き込まれていった。謎、そして……。ソウルと技巧が絶妙なハーモニーを奏でる長編ミステリ。
なんかよくわからない話だった。半分ハードボイルドのような文体。盗聴しているとあまりにも都合のよいタイミングですごいことが聞こえてくる(そして都合よく一部が聞こえない)、どうも現実味のない展開。
そして、数多くちりばめられているミスディレクションがどうも気持ちよくない。「Aだと思っていたらBだった」のBがショボい。「だから何? どっちでもよかったじゃないか」となって、カタルシスが得られないのである。同じ作者の「向日葵の咲かない夏」とはえらい違い。
ついでに書いてしまうと、最後のくだりはどういう意味だったのだろう? 私が意図を読み取れていないのか、深い意味はないのか…。釈然としないエピソードだった。