- 作者: 道尾秀介
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/07/29
- メディア: 文庫
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夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。
確かに傑作。この奇妙な設定を受け入れてしまいさえすれば、作者のペースに引きずり込まれ、主人公・ミチオによる真相究明の過程につきあうことになる。実に巧妙に構成・記述され、結果としてきっちりとした本格推理小説になっているし、ミチオの「成長譚」でもある。ちょっと他にない作品だと思う。
一方、思った通り気が重くなる展開で、さわやかな気分には最後までしてくれない。しかしこの陰惨さは決してきらいではなかった。お母さんの仕打ちはちょっとひどいなと思ったが、それも必要な要素ではある。
最後は結局何が真相で何がミスディレクションだったのかよくわからなくなってしまった。それがどうでもよくなってしまうくらい、気持ちよく(気持ち悪く?)作者に翻弄されることのできる話である。