- 作者: 法月綸太郎
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/10/01
- メディア: 文庫
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彫刻家の川島伊作が病死する直前に完成させた、愛娘の江知佳をモデルにした石膏像の首が、何者かに切断され、持ち去られた。これは江知佳への殺人予告なのか。江知佳には元恋人でカメラマンの堂本がストーカーのように付きまとっていた。彼女の身を案じた叔父の川島敦志は旧知の法月綸太郎に捜査を依頼するが…。一分の隙もなく構成された謎とロジック。「このミス」一位に輝き、絶賛を浴びた傑作。本格ミステリ大賞受賞作。
細かなことまで伏線になっていてそれらがきれいに回収される、見事な作品だった。しかしちょっと間延びした印象も。
なかなか殺人事件が起こらないし、探偵役の法月綸太郎の視点で紆余曲折を逐一描いているので展開が遅い。「これだけの長さ(文庫本で530ページあまり)にする必要があるのか?」と思いながら読んでいた(この点は「暗黒館の殺人」を思い出させる)。東京の地名や電車の路線に関する情報がやたら出てくるのも、東京に土地勘のない私にはちょっとつらい。
最後に明かされる真相には「本当にそんなことが可能なのか?」と思う部分があった。それぐらいの不自然さは推理小説にはよくあることではあるが。
...というようなことを思いながら巻末の「法月綸太郎インタビュー(貴志祐介)」を読むと、上に書いたようなことはみんな語られている。全部承知の上で書いていたのであるな。あと付け加えるとすれば、最後の方で真相が明らかになっていくところの演出が今ひとつだったように思う。
人体からの石膏直取りによる彫刻というのが物語の中心となる。本物の人体から型をとるのである。ちょっと想像してみると、そういう彫刻に芸術性があるのかなと考えてしまうのだが、ジョージ・シーガルの彫刻・レリーフのページを見てなんとなく納得した。目の前で実物を見たらさらに何か感じるものがあるかもしれない。