全脳自由帳

より考えるために書く

女囮捜査官(1) 触覚(山田正紀)

このタイトル、どうもいやらしい小説に見える。しかも最初に刊行された時はサブタイトルが「触覚」ではなく「触姦」だったそうである。中身は一応マジメなミステリーなのに。

同じタイプの若い娘三人は絞殺されたばかりか、二人はミニスカートを剥ぎ取られ、一人は髪の毛を鋭利な刃物で切られた無残な姿で発見された。山手線連続通り魔殺人事件の謎を追う囮捜査官の北見志穂は被疑者たちの前にその美貌と肉体を晒す違法ぎりぎりの捜査を強行した! 九六年度ミステリの大収穫と絶賛された前人未到の本格推理シリーズ第一弾。

解説で法月綸太郎が「詰め込まれているアイディアの密度が尋常ではない」と書いている通り、密度の濃い推理小説だった。もっともっと長い作品にもできたはずだが、短くまとめていることで被疑者がクルクルと変わるスピード感が出ていてよい。ただ、一番最後の真相が(たまたま)読めてしまったのがちょっと減点かな。それでもオススメである。

このシリーズは全5作。女性によるおとり捜査というテーマはいろいろとふくらませられそうなので、第2作以降も楽しみ。テレビでも土曜ワイド劇場(テレビ朝日系)でシリーズ化されているらしい。北見志穂役は松下由樹である。