全脳自由帳

より考えるために書く

幽霊刑事(有栖川有栖)

幽霊刑事 (講談社文庫)

幽霊刑事 (講談社文庫)

学生アリスでも作家アリスでもない、ノンシリーズの一作。1998年に犯人当てゲームのイベントとして行った推理劇の原案を小説化したもの。

俺は神崎達也。職業、刑事。美人のフィアンセを残して無念にも射殺された…はずが幽霊に!? しかも犯人の上司が密室状況で何者かに殺されて…。いったい真犯人は誰なんだ! そして俺はどうなってしまうんだ! ミステリーとラブストーリーが融合、二〇〇一年度本格ミステリー・ベスト10入りの傑作。

有栖川作品にしては謎解きの緻密さに欠けるように思ったし、真相の意外性も薄い(こっちは予想通りだが)。また、主人公が幽霊であるという特殊な設定をもっと活かせないものかとも思った。しかしラブストーリーとしてはなかなかよい。個人的にはこれぐらい抑え気味の方が好みである。

これだけの長さ(文庫版で500ページ超)が必要だったのかどうかは疑問。途中で起こる横道の「事件」がどう活きてくるのだろうと思っていたら、「そんなことのためか!」と突っ込むことになった。劇のシナリオからこの分量までよくふくらませるものだとは思うが。

オリジナルの推理劇はどんな感じだったのだろう。幽霊刑事は観客には普通に見え、他の登場人物はそれが見えないように振舞うという劇だったのか。ラストシーンだけでも観てみたい気がする。