全脳自由帳

より考えるために書く

海のある奈良に死す(有栖川有栖)

海のある奈良に死す (角川文庫)

海のある奈良に死す (角川文庫)

作家アリスシリーズは4冊目。

半年がかりで書き上げた長編が、やっと見本になった! 推理作家・有栖川有栖は、この一瞬を味わうために神田神保町の珀友社にやってきた。会議室に通され見本を心待ちにしていると、同業者の赤星学が大きなバッグを肩に現れた。久しぶりの再会で雑談に花を咲かせた後、赤星は会議室を後にした。「行ってくる。『海のある奈良』へ」と言い残して…。
翌日、福井の古都・小浜で赤星が死体で発見された。赤星と最後に話した関係者として、有栖は友人・火村英生と共に調査を開始するが―!?
複雑に絡まった糸を、大胆にロジカルに解きほぐす本格推理。

トラベルミステリー的な雰囲気と、それに伴っていろんなウンチクが語られるのはいいのだが、なんかすっきりしない話だった。火村英生の推理が冴え渡ったという感じでもないし、真相究明に至るロジックがどうも甘いというか、いろんな伏線がきっちり回収されていきながら真相へ収束するという感覚が味わえない。そしてそもそもの「『海のある奈良』とは?」という問いに対する答が中途半端に終わってしまっている。そのせいもあってか、最後に明らかになる意外な人間関係も今ひとつインパクトを欠く。