全脳自由帳

より考えるために書く

スウェーデン館の謎(有栖川有栖)

スウェーデン館の謎 (講談社文庫)

スウェーデン館の謎 (講談社文庫)

作家アリスの国名シリーズ第2作にして初の長編。

取材で雪深い裏磐梯を訪れたミステリ作家・有栖川有栖スウェーデン館と地元の人が呼ぶログハウスに招かれ、そこで深い悲しみに包まれた殺人事件に遭遇する。臨床犯罪学者・火村英生に応援を頼み、絶妙コンビが美人画家姉妹に訪れたおぞましい惨劇の謎に挑む。大好評国名シリーズ第二弾! 長編ミステリ。

エラリー・クイーンのひそみにならい、という国名シリーズだけあって、火村英生はあくまでロジックで真相を究明する。したがって意外性はそんなにないし、この作品に関しては結末の予想がある程度ついたのだが、きっちりしていて読後感のよいミステリーだった。雪密室のトリックには大いに感心。そしてドラマとしても私好みだった。

本筋とはあまり関係ないが、途中で出題される「水汲みパズル」には拍子抜け。ちょっとパズル好きの人間ならすぐにわかる(もしくは知っている)問題である。「いや、そんな簡単なはずはないから何かウラがあるのか?」と思ったが、なかった。火村英生の明晰さを際立たせるためのエピソードとしては逆効果だと思う。親しみやすい話にするための作者の工夫だと解釈すべきか。