- 作者: 有栖川有栖,綾辻行人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1995/03/07
- メディア: 文庫
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密室殺人というのは推理小説で非常にメジャーな題材である。そのせいか、有栖川氏を含む新本格と呼ばれる世代では「古今東西、ジョン・ディクスン・カーをはじめとしてすでに何百何千という密室トリックが考案されている」ということがハナから前提になっており、作中でそれが語られることが多い。この作品でも同様のセリフが出てくる。
しかしそのことがチープな密室トリックの言い訳になってはならないわけで、何百何千という先例があるにもかかわらず新規性のある密室トリックを考え出すか、あるいは密室トリックそのものでなく周辺も含めたところで何かを訴求するかが求められる。
で、この作品はどうなのかというと、あとがきで作者が「密室小説というより、一種のメタ密室小説」と書いているのが解答になると思う。メタ密室小説であるがゆえに、前述の「古今東西、...」というようなことを作中で語り、それを利用したしかけになっている。
という理解のもと、おもしろい作品だった。ロジックがきっちりしていて読後感よし。被害者を含め作中に推理作家が何人か登場するが、変に楽屋オチのようにならずに、作家という商売を客観的に描いていると思う。探偵としては火村英生より江神二郎の方が好感が持てるが、作家アリスとのコンビは悪くない感じ。このシリーズは短編集も多いので、気楽に読み進めていきたい。