全脳自由帳

より考えるために書く

パーフェクト・ブルー(宮部みゆき)

パーフェクト・ブルー (創元推理文庫)

パーフェクト・ブルー (創元推理文庫)

1989年、宮部みゆきの長編デビュー作。

高校野球界のスーパースターが全身にガソリンをかけられ、焼き殺されるというショキングな事件が起こった。俺――元警察犬のマサは、現在の飼い主、蓮見探偵事務所の調査員、加代子と共に落ちこぼれの少年、諸岡進也を探し当て、自宅に連れ帰る途中、その現場に遭遇する。犬の一人称という斬新なスタイルで、社会的なテーマを描く、爽快な読後感の長編デビュー作、怒涛の文庫版。

2つの話(メインの「マサは語る」とサブの「木原」)が並行して描かれ、最後に1つになって結末へ向かう。

さすがにうまく構築されている。意外な真相も不自然に思うことなく受け入れられた。精緻なミステリー小説でありながら青春小説でもあり、社会派小説にもなっている。

難を言うと、個人的に好みに合わない点が2つ。まずこの物語が犬のマサの視点で語られていること。犬の語りにしなくても特に問題なく描ける話だと思う。動物が好きな人にはよい味つけになっているのかもしれないが。それと、登場人物(特に諸岡進也と蓮見姉妹)がやたらとしゃれたセリフをしゃべること。今までに読んだ宮部作品ではそんなことはなかったので、このデビュー作だけの趣向だったのかもしれない。

これら2つの点は「アヒルと鴨のコインロッカー」(伊坂幸太郎)と共通しているのだが、読み終えてみるとこの「パーフェクト・ブルー」ではそれほど障害になっていない。読後感よし。