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クリスマス未明、一人の中学生が転落死した。柏木卓也、14歳。彼はなぜ死んだのか。殺人か、自殺か。謎の死への疑念が広がる中、“同級生の犯行”を告発する手紙が関係者に届く。さらに、過剰報道によって学校、保護者の混乱は極まり、犯人捜しが公然と始まった――。ひとつの死をきっかけに膨れ上がる人々の悪意。それに抗し、真実を求める生徒たちを描いた、現代ミステリーの最高峰。
ある人から強く勧められたので、ほとんど予備知識なしの状態で、まずは第I部の2冊(文庫版)だけ買って読み始めた。そこまででいったん何かのケリがつくのかと思っていたらさにあらず、まだ導入が終わっただけという感じ。これはやめるわけにはいかない。結局残り4冊も買い、全部で3000ページ超を短期間で読み終わってしまった。とにかくどんどん読み進めてしまう。細かい描写も読みやすくて飽きさせない。さすが宮部みゆきである。
ミステリーとしての謎解きや意外な結末といった要素はあまりないのだが、中学生の心情と成長がよく描かれている。それぞれの登場人物なりの思いの発露と、「真実を知る」ということに対する渇望が心に響く。視点人物を入れ替えながら語られていく構成が功を奏している。特に、主人公に近い藤野涼子については、視点人物になったりならなかったりすることによってつかず離れずの描写になっているのがよい。
最終巻に収録されている書き下ろし「負の方程式」は、大作を最後まで読んだごほうびというところか。