- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1995/01/30
- メディア: 文庫
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嵐の晩だった。雑誌記者の高坂昭吾は、車で東京に向かう道すがら、道端で自転車をパンクさせ、立ち往生していた少年を拾った。何となく不思議なところがあるその少年、稲村慎司は言った。「僕は超常能力者なんだ」。その言葉を証明するかのように、二人が走行中に遭遇した死亡事故の真相を語り始めた。それが全ての始まりだったのだ…宮部みゆきのブロックバスター待望の文庫化。
宮部作品にしてはストーリーがシンプル。これまでに読んだ他長編のような、巧緻に構成され周到に伏線が張りめぐらされた話という感じではなかった。「このままシンプルに終わってしまうのか?」と思っていたら、終盤では複雑な真相が明らかになってくる。このあたりのまとめ方はさすが。
この主題から筒井康隆の七瀬シリーズが連想されるが、そっちとは違い、「彼らは本当に超能力者なのか?」という語り手たちの疑問を残したまま話が進む。それを軸にずっと引っ張られるのはちょっとしんどかったなという印象。相変わらず少年の描き方はうまいし、語り手・高坂の心の動きにも共感しながら読めるのだが。