全脳自由帳

より考えるために書く

太宰ふたたび

走れメロス (新潮文庫)

走れメロス (新潮文庫)

太宰治の小説に出会ったのは高校時代だった。なぜか性に合っていたようで、新潮文庫で15冊ぐらい読んだはず。

それからずっとほったらかしにしていて、本も実家に置いたままになっているのだが、先日ふと本屋で「久しぶりに読んでみるか」と思い、これを買った。当時も特に気に入っていた短編集。表紙は昔の黒っぽいものから明るい感じに変わっている。

読み始めると昔と同じように引きつけられた。やはりよい。表題作「走れメロス」は古典の焼き直し(?)なので特に思い入れはないが、「ダス・ゲマイネ」「富嶽百景」「女生徒」「東京八景」などは太宰の文体と暗さ・なさけなさ加減、そしてその後ろにある美しさというのかひたむきさというのか、そういうものが今でも妙にしっくりくる。「ダス・ゲマイネ」は昔はとても激しい印象を受けたが、今読むとそうでもなくて、また違った味わいがある。

1冊読むと、当然のなりゆきとして他のも読みたくなってくる。これも高校時代とは違い、今は1948年に太宰が死んでから50年(著作権保護期間)以上経っていて、かなりの作品を青空文庫で読むことができるのだが、やはり本を買って読んでみたい。