全脳自由帳

より考えるために書く

日本庭園の秘密(エラリー・クイーン)

日本庭園の秘密 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

日本庭園の秘密 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

流行作家カレン・リースのニューヨークの邸内に美しい日本庭園が造られた。だが、結婚を控え、幸せの絶頂にあった彼女が、その庭をのぞむ一室で怪死を遂げる。窓には鉄格子がはめられ、屋根裏部屋へ通じる扉は開かず、事件現場に出入りした者は誰もいないようにみえた。密室と思われる状況下の悪夢の死。名探偵エラリイ・クイーンの推理はすべての謎を解明できるのか? 日本のすべての読者に捧ぐ<国名シリーズ>最終作

「日本」とついていてもこれは国名シリーズの作品ではない、と聞いていた。原題は"The Door Between"で、国名は入っていない。邦題をつける時に「日本」を入れただけだと思っていた。

しかし上記紹介文(裏表紙)には「国名シリーズ」とあるし、解説には、「当初は”The Japanese Fan Mystery”というタイトルだった」と記されている。当時(1937年ごろ)の日本との関係に配慮して変更したとのことだが、これも定かではないらしい。また、刊行順では前作「スペイン岬の秘密」との間に「途中の家」がはさまっている。いろいろ総合すると、国名シリーズの作品ではないとしておいた方がよさそう。

で、内容はどうだったかというと…謎解きにはあまり満足できなかった。このパターン(何のことかは秘す)、あまり好きではない。最後はなかなか意外だったが。

国名シリーズではないらしいのに、日本文化に関することは割とよく出てくる。日本人のことはあまりよい感じには描かれていないし、ちょっと差別的な見方をされている気もするが、この時代ならそんなものだろう。

この作品は他のクイーン作品(早川文庫)よりも翻訳がいくぶん読みにくいように思った。おかげで少し骨が折れた。

創元推理文庫の邦題は「ニッポン樫鳥の謎」である。こちらの紹介文(多分本の裏表紙にも書いてあるのだと思う)には完全なネタバレがいくつか。何を考えて書いたのだろう。見たのが「日本庭園の秘密」を読んでからでよかった。