全脳自由帳

より考えるために書く

ギリシャ棺の秘密(エラリー・クイーン)

ギリシャ棺の秘密 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-30)

ギリシャ棺の秘密 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-30)

1932年、国名シリーズ第4作。ただし作中の時間軸ではこれが最初の事件で、探偵役のエラリイ・クイーンはまだ非公式の捜査官を始めたばかりの設定。

盲目の老富豪ハルキスの死がすべての発端だった。葬儀は厳粛に執り行なわれ、遺体は無事、教会墓地に埋葬された。だが、その直後奇妙なことが起こった。保管済みの遺言状が見事に消失し、捜査も空しく何の手がかりも得られなかったのだ。大学を出たばかりのエラリイは棺の発掘を主張したが、そこから出たのは第二の死体だった! 緻密な推理が二転三転し、謎の犯人との息づまる頭脳戦が展開する、巨匠の最大長編。最新訳

これまでの4作の中で一番複雑な話だった。狡猾な犯人にエラリイは屈辱を味わわされる。それでもめげずに一計を案じて逆襲するところは相当鼻っ柱が強い。最大長編というだけあって、内容豊富でぎっしり詰まった話だった。

例によって、「ギリシャ棺」といってもギリシャ製の棺桶が出てくるわけではないし、ギリシャに行くわけでもない。いずれにしても、火葬が一般的な日本では起こりえない事件。

いつもの通り「読者への挑戦」がはさまれるが、例によって私には誰が犯人なのか全くわからず。賭けてもいいが(← 海外小説でよく出てくるフレーズ。"I bet ..."か?)、一日考えても真相にたどりつくことはできなかっただろう。

ただ、真相に至る長い道筋の中にはちょっとロジックの甘いところがあるような気がする。「〜にちがいありません」「〜と見て、まず間違いないものと考えます」と言われても完全には納得できない箇所があった。

感心したのは、国名シリーズの前3作を読んでいるとこの作品の推理が少しだけ楽になること(手がかりと言えるほどのものがあるわけではないが)。そのためにわざわざ最初の事件を4作目にしたのならすごいが、多分違うだろうな。