「ギリシャ棺の秘密」の中で気になったところがあったので補足。以下は若干ながらネタバレ(本筋にはほとんど関係ないが)なので、この作品を未読でかつ今後読む可能性があるという人は見ない方がいいと思う。
エラリイ・クイーンによる途中の推理で「色盲」とされる人が出てくる。「つねに赤色を緑色に、緑色を赤色に見る部分色盲」だという。つまり赤いものを見せると緑だと言い、緑色のものを見せると赤だと言う色盲だというのである。
これはいくらなんでもおかしい。「赤色を緑色に、緑色を赤色に見る」ということは、赤と緑をちゃんと見分けられるわけで、それなら色盲(色弱)でも何でもないのである。単に色の名前を逆に覚えてしまっているに過ぎない。それを正してやればすむことである。
彼に赤いネクタイを用意させるためにわざわざいつも「緑のネクタイを用意しろ」と言うようにしなくても、一度「これは緑ではなく赤なのだよ」と教えてやればよい。もちろん緑のネクタイの方も「これは緑なのだよ」と教えてやる。それで万事OKである。
仮に、赤い色を見た時の彼の視界で、他の人が緑色を見た時の色が見えているのだとしても、それを「赤」と覚えてしまえば何の問題も生じない。同じ色を見た時に自分の視界の中で他の人と同じ色が見えているかどうかは、そもそも正常な色覚を持つ人同士でも検証不可能なことである。