天才ガロアの発想力 ?対称性と群が明かす方程式の秘密? (tanQブックス)
- 作者: 小島寛之
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2010/08/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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最近「ガロア理論入門」を買ったのだが、かなり難しい。そこで「群の叡智 - ガロア理論を知るための三作 - 404 Blog Not Found」で小飼弾氏が書かれている通りに、「天才ガロアの発想力」「ガロアの群論」「ガロア理論入門」の順に読もうと思う。
で、本書。著者が書かれている以下のエントリを見ても、入魂の力作だというのがわかる。
実際、中学数学程度の知識(2次方程式は解けるぐらい)を前提にした、非常にわかりやすい解説書だった。ガロアの理論に興味のある人にオススメ。特に第2章で、2次方程式を題材にして「体と自己同型を使って解の公式を導出する」プロセスを体験できるのがいい。次に群とはどういうものかを図形を使って解説し、しかるのちに3次方程式に話を移すという順序で話が進む。
その結果、5次以上の方程式では解を含む体の自己同型の成す群が簡単でなくなるために、係数から解が導けないことがあるというのはわかったが、もう一歩踏み込んで理解したかったな。クライマックスのところ(P193)、
例えば、5次方程式の解から作った体の自己同型の成す群は、5本のあみだクジのつくる群(120個の元から成る)と同型の群となります。そして、この群は十分に複雑な構造の群であるため、上に提示したような(右剰余類が巡回群となるような)部分群の系列が存在しないことを示すことができるのです。証明は略します。そういうわけで、5次以上の方程式には、解の公式が存在しないことが証明されました。
これは完全ではない「それなり版」の証明であるという前提ではあるのだが、「証明は略します」のところでズッコケてしまった。そこは書いてくれないのか…。ここまできたら、具体的に部分群の系列が作れない様子を大まかにでも観察して「ああ、こういうケースがあるから5次では無理なのか!」と納得したかったのだが、難しくなりすぎるということなのかな。他の本で勉強することにしよう。
それから、誤記が多いのが気になった(私が読んだのは初版第1刷)。本当に誤記なのか自信が持てないのもあるが、見つけたのは以下。
- P16 10行目 デル・ファッロ→デル・フェッロ (P19のフェッロと同一人物だと思うのだが)
- P109 4行目,8行目 f1○h2→f1○h1 / 6行目 h2○f2→h1○f2
- P110 7行目 第一に区分け→第一の区分け
- P148 12行目 4次方程式では類似の方法にフェラーリがそのことに→…類似の方法で(?)…
- P167 10行目 f(p)→f1(p)
- P187 5行目 拡大体Kとするなら→拡大体をKとするなら / 体Kの体F上自己同型の→体Kの体F上の自己同型の (どちらも誤りというほどではないが)
- P189 下から2行目 f(a)→f(α)
- P191 一番下の行 体Kmが→体Kmの
特に、数式を追っていて「これ、誤記じゃないか?」と思いだすと自分の理解が正しいのか不安になってくるのでつらい。「キュートな数学名作問題集」でも誤記がちょっと気になったが、初版第1刷というのはこんなものなのだろうか。
2010.9.6追記
誤記に関して、出版元の技術評論社の問い合わせページから上記と同じ内容を送ったら、担当されている方から速攻で返信をいただいた。上記のうち2つ目については確認中、他は第2刷で修正手配ずみか、次の第3刷で修正していただけるとのこと。