数学ガール/フェルマーの最終定理 (数学ガールシリーズ 2)
- 作者: 結城浩
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2008/07/30
- メディア: 単行本
- 購入: 35人 クリック: 441回
- この商品を含むブログ (258件) を見る
- 第1章 無限の宇宙を手に乗せて
時計の完全巡回、互いに素- 第2章 ピタゴラスの定理
原始ピタゴラス数と単位円周上の有理点- 第3章 互いに素
最大公約数・最小公倍数、素因数分解と素数指数表現- 第4章 背理法
例としてが有理数でないことの証明- 第5章 砕ける素数
複素数やその演算の複素平面上の表現、素数⇒ガウスの整数の積の分解可能性- 第6章 アーベル群の涙
群、アーベル群- 第7章 ヘアスタイルを法として
modによる合同、合同式と除算、環・体- 第8章 無限降下法
無限降下法、フェルマーの最終定理のの場合の証明- 第9章 最も美しい数式
- 第10章 フェルマーの最終定理
歴史と証明の概略(楕円曲線、保型形式、谷山・志村の予想/定理、フライ曲線)
中学生のユーリが新キャラとして登場。フェルマーの最終定理にアプローチしていく本だけに、前作よりさらに数論に焦点を当てた内容になっている。前半はかなり知っていることが多かったのだが、それでも「なるほど」と思わされることが散りばめられていた。
タイトルに掲げられているだけあって、フェルマーの最終定理の証明の概略をきちんと説明してくれるのはうれしい。サイモン・シンの名著「フェルマーの最終定理」でもここまでは書かれていなかった。
他の人も書いていたと思うのだが、第9章はちょっと浮いているかもしれない。テイラー展開はテトラちゃんの担当(?)だったと思うので(「テトラー展開」とか言ってたぐらいだし...)、別の場所で彼女との会話の文脈で出てきた方が自然だったかも。ユーリはユーリ数が担当、というわけではないだろうけど。
それにしてもユーリという子、中学生だと思って油断してたらムチャクチャ頭いいではないか。最後の章での活躍には目を見張った。
この本を読んで、自分でも何かやってみようと思い、「円上に有理点は存在しない」 の証明にトライしたらなんとかできた。数式を自分でいろいろいじくったのは「渡り廊下問題(1)(2)」以来である。
世間では、数学や物理学というととりあえず「苦手だった」「全然わからない」と言っておいて「そうですよねえ」という空気を共有するのが「お約束」のようになっているが、このシリーズに出てくる女の子たちのように前向きに興味を持てたら、自分なりの理解の範囲でおもしろいことはたくさん見つけられるはずだと思うのである。
2009.4.23追記
このエントリにも著者の結城浩さん(id:hyukiさん)からはてなスターとトラックバックをいただいた。ありがとうございます。「新版暗号技術入門 秘密の国のアリス」も買ったので、読んだら感想を書こうと思う。