全脳自由帳

より考えるために書く

数学ガール(結城浩)

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

前から読みたいと思っていた本。想像していたよりずっとよい本だった。本屋でパラパラめくった限りでは、前半は知っていることばかり出てくるのかと思っていたが、違っていた。各章のタイトルと、補足として章の内容の要約を書くと以下のようになる。

  • 第1章 数列とパターン
    数列の最初の部分を見てその後(あるいは一般項)を推測する
  • 第2章 数式という名のラブレター
    約数の和、方程式と恒等式
  • 第3章 ωのワルツ
    複素平面上の数列
  • 第4章 フィボナッチ数列と母関数
    数列→母関数→母関数の閉じた式→数列の一般項
  • 第5章 相加相乗平均の関係
    (ここはまさしくタイトルの通り)
  • 第6章 ミルカさんの隣で
    離散的な世界での導関数・n次関数(下降階乗冪)・指数関数
  • 第7章 コンボリューション
    カタラン数の母関数と一般項、コンボリューション(たたみ込み)
  • 第8章 ハーモニック・ナンバー
    調和数、調和数と連続関数との関係、素数の無限性
  • 第9章 テイラー展開バーゼル問題
    \sin xテイラー展開を用いてバーゼル問題(\zeta(2))を解く
  • 第10章 分割数
    分割数の母関数・上界

話は「僕」と2人の女の子「ミルカさん」「テトラちゃん」(あまりその方面に詳しくないのだが、ミルカさんはツンデレ系、テトラちゃんは妹系ということになるのだと思う)との間の会話をベースに進んでいて、要点をきちんとおさえてくれるので理解しやすい。連続な世界での微分に対応する離散的な世界での「差分」の定義、カタラン数(0+1+2+\cdots+nにおけるカッコのつけ方の総数)の一般項の求め方、バーゼル問題の解き方、分割数の上界を設定していく戦略などは非常に興味深かった。

それにしても、自分が三角関数の倍角公式(より一般的には加法定理)をきれいさっぱり忘れていたのにはあきれた。ふだん使う機会なんてまずないのではあるが。ついでにここにメモしておく。

  • \sin(\alpha + \beta) = \sin\alpha\cos\beta + \cos\alpha\sin\beta \Rightarrow \sin 2\alpha = 2\sin\alpha\cos\alpha
  • \cos(\alpha + \beta) = \cos\alpha\cos\beta - \sin\alpha\sin\beta \Rightarrow \cos 2\alpha = \cos^2 \alpha - \sin^2 \alpha = 1 - 2\sin^2\alpha = 2\cos^2 \alpha - 1
  • \tan(\alpha + \beta) = \frac{\tan\alpha+\tan\beta}{1 - \tan\alpha\tan\beta} \Rightarrow \tan 2\alpha = \frac{2\tan\alpha}{1 - \tan^2 \alpha}

続巻「数学ガール/フェルマーの最終定理」もおもしろそうなので読む予定。

2009.3.22追記

著者の結城浩さん(id:hyukiさん)からはてなスタートラックバックをいただいた。ありがとうございます。