数学ガール/ゲーデルの不完全性定理 (数学ガールシリーズ 3)
- 作者: 結城浩
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2009/10/24
- メディア: 単行本
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- 第1章 鏡のモノローグ
論理クイズ- 第2章 ペアノ・アリスメティック
ペアノの公理、ペアノ算術- 第3章 ガリレオのためらい
集合、無限を扱うこと、ラッセルのパラドックス- 第4章 限りなく近づく目標地点
極限、収束/発散- 第5章 ライプニッツの夢
論理式と形式的体系、公理と推論規則、証明と定理- 第6章 イプシロン・デルタ
収束・極限値の定義、連続・不連続- 第7章 対角線論法
可算集合と対角線論法、無矛盾性と完全性、第一不完全性定理- 第8章 二つの孤独が生み出すもの
自然数ペアに関する考察、同値関係- 第9章 とまどいの螺旋階段
三角関数とそのグラフ- 第10章 ゲーデルの不完全性定理
第一不完全性定理の証明、第二不完全性定理の証明の概略、不完全性定理の持つ意味
第1巻も第2巻もよかったので期待していたが、期待を上回るおもしろさだった。
まずペアノの公理のところで、公理を扱うことを「知らないふりゲーム」と呼ぶテトラちゃんのたとえに感動。ヒルベルトがやろうとしていたことも壮大な「知らないふりゲーム」だったのかもな。ε-δの説明での「僕」によるたとえもわかりやすかった。
第7章、今まで対角線論法の話は(「よく知ってるから…」と言えるほどではないにしても)何度も読んだことがあるのだが、ここまで考えたことはなかったので目からウロコ。
「僕」と3人の数学ガールたちのストーリーとしても新たな展開がある。第9章は数学の話としては浮いていると思うが、「僕」たちのストーリーの中に置くと、この章の意味がなんとなく見えてくる。
そして第10章では不完全定理の証明に入っていく。関数・述語の定義の続く《冬》が長くて、理解しながら読もうとすると時間がかかった。何回か読むのを中断した末に、青息吐息ながら証明完までたどり着けたので達成感あり。あとで「ゲーデル 不完全性定理」(林晋・八杉満利子 訳・解説)でゲーデルの論文を確かめると、いたって素朴に定義が並べられていて、やはりこの論文だけ読んでもとてもわかりそうにない。
この第10章では「不完全性定理の意義」にまでちゃんと言及されていて、「理性の限界を示したもの」というような解釈には異を唱えている。「不完全性定理はもっとポジティブなものなのだ」というメッセージが伝わる。
以前書いたゲーデル本3冊に加えて、4冊目の愛読ゲーデル本になった。今後勉強してみたいこととして以下の2点をメモ。
- ペアノの公理の5番目について、もっと突っ込んだ話
数学的帰納法が出てくるやつ。テトラちゃんの興味は数学的帰納法自体に行ってしまったが、このPA5は「述語」という概念が出てくるので、PA1〜4に比べて複雑でわかりにくい(そういう意味では平行線の公理と似たところあり?)。 - 不完全性定理の意義
この本の第10章で書かれていたことより詳しいことを。
この2つを頭に置いて他の本も読んでみたい。数学ガールシリーズ次作のテーマが何なのかも楽しみである。