梅田望夫氏の新刊が電子書籍で出た。紙の本としては出ていない。iPhoneとiPadでアプリとして購入して読むことができる。どちらも450円。iPhone版の方を購入して読んだ。
タイトルに「やってきたから」とあるので、iPadが出た後に書き下ろしたものだとばかり思っていたらそうではない。2008〜9年に書かれた内容がメイン。これにはガッカリ。
そのせいもあるのかもしれないが、本文の内容にはあまり目新しいものを感じなかった。梅田氏ならこういうことを書くだろうなと私でも思うような(あるいは読んだ覚えのある)話が多い。
ただし、付録として収録されている中島聡氏との往復書簡は読みごたえがある。AppleやGoogleの考えていること・やったこと、シリコンバレーの特異性、日本の企業の置かれている立場など、勉強になることが多い。対談と違って、双方が考えを整理した上で相手に送っているので、中身の濃い議論として読むことができる。この部分だけを本にしてほしいくらいである。「増える往復書簡」としてウェブ上でもう少し続くはずなので、引き続き注目。
本文を読むソフトとして、その中島氏作成のCloudReadersをベースにしたものが使われているのだが、使い勝手にはかなり不満が残る。
- アプリを起動した時に、前に読んでいたところが開かれない。正確には、iOS4でアプリがバックグラウンドで待機した状態になっている間は再起動で同じところから読めるが、そのうち終了してしまうと決まったところ(最初の方)に戻ってしまうようで、どこまで読んでいたかわからなくなる。つまり、アプリ自身はどこまで読んだかを全く管理していない。本を読むソフトとしてこれは致命的。
- 今何ページ目なのかを知る操作が使いにくい。本文中左上のページ番号(本文中に埋め込まれている)以外にリーダの機能を使って知るにはスクロールバーのボタンを押さないといけないようなのだが、そんな方法はすぐには発見できないし、このボタンはページを移動するためのものなので、押すとページが変わってしまいそうで気持ちが悪い。「おもてなし」としてかなり問題だと思う。全体で何ページあるのかを知るのにも同じ操作をしなければならないようである。
- ページを速めにどんどんめくっていると画面が真っ白になることがある。これはiOSのせいなのかもしれないが。
- 本文中にURLが記載されているところはリンクを張って、そこに飛べるようにしてほしかった。せっかくの電子書籍なので。
CloudReadersは、iPadでPDFのファイルを読む時などには非常にレスポンスがよくて使いやすいソフトなので、今後のアップデートに期待(といってもこの本はもう読んでしまったが)。
それからこの本、iPhoneとiPadで別々に買わないといけないのはいただけない。iBooksやKindleのように、一方で買えば他方でも追加料金なしに読めるようにしてくれるとよかったのだが。