全脳自由帳

より考えるために書く

理性の限界―不可能性・不確定性・不完全性(高橋昌一郎)

理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)

理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)

久しぶりにこの手の新書を読んだ。とてもおもしろい本だった。以下の3つの定理/原理とその周辺について書いた本。

どの定理も「理性によって世界を御することの限界」を語っている。

不可能性定理というのは最近まで知らなかった。大ざっぱに言うと、「完全に民主的な選挙方法は存在しない」という事実を述べた定理。選挙のやり方によって当選者が変わるという現象は、つい最近にもアメリカやフランスの大統領選挙で起こっている(たとえば、2000年のアメリカ大統領予備選挙有権者投票総数はゴアの方がブッシュよりも多かった)が、そもそも誰にも文句のつけられないシステムを構築することは原理的に不可能だという。この章は「集団的合理性と個人的合理性」を主題に、囚人のジレンマやチキンゲームの話に発展する。

不確定性原理の章はよく聞く話(ラプラスの悪魔とかシュレディンガーの猫とか)が中心だが、パラダイム論や「方法論的虚無主義」の話でちょっと煙にまかれた。

不完全性定理の章では、認知論理システムというのが興味深かった。それを通じて「ぬきうちテストのパラドックス(死刑囚のパラドックス)」が不完全性定理とつながってくるというのは驚きである。

昔読んだ同じ著者の「ゲーデルの哲学」もよかったが、この本もこういう分野に興味のある人にはオススメ。