全脳自由帳

より考えるために書く

霧に溶ける(笹沢左保)

霧に溶ける (光文社文庫)

霧に溶ける (光文社文庫)

1960年の作品。

ミス・コンテストの最終予選に残った5人の美女が、最終審査を前にして、脅迫、交通事故、怪死…次々と謎の事件に巻き込まれてゆく。警視庁特捜班の追及が開始されるが、巧妙なアリバイ工作、鉄壁の密室など、複雑に絡み合った“犯罪連立方程式”が立ちはだかった。
周到な伏線が、読者を不可能犯罪の迷宮へと誘う、笹沢本格推理ワールド決定版。

まさに「不可能犯罪の迷宮」だった。解説(山前譲)で「惜しげもなく多くのトリックを投入」と書かれているように、連続殺人のいずれにも凝ったトリックがある。密室殺人のトリックは懐が深かった。また「マジックミラー」(有栖川有栖)の「アリバイ講義」で「遠隔殺人を駆使する作家」として紹介されている通り、犯人が現場にいない殺人が登場する。

笹沢左保作品を読むのは3作目だが、どの作品もしかけに味があったし、恋愛小説としても機能している。かれこれ50年も前にこんな作品が書かれていたとすると、今の推理小説が進化している点は何なのだろう。まだまだ氏の他の作品も読んでみたい。光文社文庫で「笹沢左保コレクション」というのが出始めているようだし。