全脳自由帳

より考えるために書く

学生街の殺人(東野圭吾)

学生街の殺人 (講談社文庫)

学生街の殺人 (講談社文庫)

1987年の第4作。

学生街のビリヤード場で働く津村光平の知人で、脱サラした松木が何者かに殺された。「俺はこの街が嫌いなんだ」と数日前に不思議なメッセージを光平に残して…。第2の殺人は密室状態で起こり、恐るべき事件は思いがけない方向に展開してゆく。奇怪な連続殺人と密室トリックの陰に潜む人間心理の真実!

学舎の移転によりさびれてしまった「旧学生街」が舞台。そのせいもあって、全体にうらぶれた空気が漂う。この時期の東野作品の「お約束」として密室が登場するが、今回は文字通りの密室ではない。

解説(新保博久)で「東野圭吾が化けた作品」と書かれているように、前3作(「放課後」「卒業」「白馬山荘殺人事件」)に比べて格段に濃厚かつ精緻なストーリーになっているように感じる。推理小説としても人間ドラマとしても読みごたえのある作品である。登場人物は結構多いが、混乱することなく読めた。

それにしても主人公の津村光平、もてますなあ。そういう奴というのはいるものである。