全脳自由帳

より考えるために書く

羽生善治と「ウェブ進化論」

梅田 2004年頃かな。羽生(善治)さんに僕が最初にGoogleの話をしたとき、彼が最初に言ったことが、「Googleって必ず政府とぶつかりますよね」と。この人は、将棋の天才ということを超えて、世の中の本質を見抜くすごい人だなと思った。それで『ウェブ進化論』のゲラを読んで感想をいただいた。その内容がまたすごくて、『ウェブ進化論』の帯にその言葉の一部をいただいたんです。

日経ビジネスEXPRESS: 【「ウェブ進化論」の梅田望夫氏に麻布の蕎麦屋で聞いた話:後編】ウェブの頭脳とリアルの歯車を噛み合わせろ!

1996年の七冠フィーバーのころ、羽生善治という人には世間でありがちだった「将棋一筋で世事にはうとい人」という勝手なイメージを私も持っていたのだが、その後将棋や棋士について書かれたいろんなものを読むにつれ、この人はとんでもなく立派な人だと思うようになった。将棋というものに取組む姿勢とか勝負への執着だけでなく、将棋の普及活動への姿勢、チェスへの取組み、他の業界の人との対談で見せる見識など。すごい人なのである。

梅田望夫氏の本「ウェブ進化論」の帯の言葉というのは以下である。

これは物語ではなく
現在進行形の現実である。
グーグルとネット社会の未来について、
希望と不安が見えてくる。
羽生善治

この本は私も読んだ。インターネットで今起こっていることについて整理して理解できる、とてもいい本だと思った。しかし本の中で「オプティミズム(楽天主義)と果敢な行動主義」と書かれているように、ネットの現実についての「希望」は書かれていても、「不安」については直接にはあまり書かれていない。そこをあえて「希望と不安が見えてくる」と書いてしまうところがすごい。帯の文章らしく手にとって読みたくなるような「呼び込み」になっているだけでなく、「読んで自分で考えなさい」というメッセージにもなっている。

A級プレーオフで谷川が羽生に勝って名人戦に名乗りを上げたのは谷川ファンの私としてはうれしいことなのだが(谷川浩司もすごい人なのである)、羽生にもまた名人戦に出て、あと1期となっている永世名人の資格を手に入れてほしいものである。といってもその時の名人が谷川だったら複雑な気持ちになってしまうが。