- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/07/24
- メディア: 文庫
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不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた。ところが僕はその台詞を自分に対して発しなければならなくなる―。建設会社に勤める渡部は、派遣社員の仲西秋葉と不倫の恋に墜ちた。2人の仲は急速に深まり、渡部は彼女が抱える複雑な事情を知ることになる。15年前、父親の愛人が殺される事件が起こり、秋葉はその容疑者とされているのだ。彼女は真犯人なのか? 渡部の心は揺れ動く。まもなく事件は時効を迎えようとしていた…。
前半はごく普通の不倫の話が進行する。恋愛小説として、もう若くない男の心の揺れ動くさまを見守りつつ、大きな動きがあるのをじっと待つ感じ。なんとなく、他の東野作品より少し文体がくだけている気がする。
後半は過去の殺人事件が本格的にからんできて話が大きく動く。いつものようによくできたしかけではあるのだが、なんか不自然な話だった。その理由を考えてみると、1つには前半の「普通の話」が長かったこと。それと殺人事件の肝心かなめの真相が「なんで誰も気がつかなかったの?」というようなものだったこと。それに加えて、不倫相手である秋葉をそれほどすごいと思えなかったこともあるかもしれない。
インタビューで「基本的に女性のことは悪く書かない。知らんから(笑)」と言っているように、東野圭吾は強い女性を描くことが多いが、秋葉は他のいくつかの東野作品に出てくるような「おそれ入りました」感を強烈に味わわせてくれる女性ではなかった。冷静に考えるとかなりすごいのだが。一方で、ストーリーとしては「男は愚かで単純、女はしたたかでコワイ」というのがちょっと前面に出すぎの感がある。
それと「秋葉」という名前、「あきは」だとわかっていても心の中では最後まで「アキバ」と読んでしまった。他の名前にしてほしかったな。
最後におまけの章がある。わざわざこういう章を設けているからにはとんでもないことが明かされるのかと思ったら...。この章はない方がよいと思う。