私の父が吉川英治の「三国志」を愛読書にしていて、読めとよく言われた。しかし長いし時代物は苦手なので読まなかった。
ただし横山光輝のマンガの方は、この1巻を散髪屋で読んだことがあった。劉備玄徳が母のために買った茶をその母に川に投げ捨てられるくだりや、関羽・張飛との「桃園の誓い」の場面は強烈に心に残っている。
そのマンガ「三国志」は1987年に全60巻で完結している。数年前、知人からそれを借りる機会があった。「桃園の誓い」の続きを知りたいと思って読み始めたのだが、2、3冊でやめてしまった。
読めない理由の一つは、戦国武将というものに自分がどうも共感できなくなっていること。大義はわかるが、「結局はみんな人殺しじゃないか」と思ってしまうのである。平和な国(今のところ)に住んでいる人間の典型的な言い分だということはわかりつつ。
そして、人があまりにも簡単に殺されることにウンザリしてしまった。
こんなシーンがやたら出てくる。ひどい時には「ええい、気に入らぬ」などと言って罪もない人をバッサリ斬ってしまうこともある。その人にはその人の人生があるのに。
これらは、子供の頃には全く平気だったことである。大人になったというより、年をとって死がより身近になったということか。