- 作者: 島田荘司
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 1993/03/01
- メディア: 文庫
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浅草で浮浪者風の老人が、消費税12円を請求されたことに腹を立て、店の主婦をナイフで刺殺した。だが老人は氏名すら名乗らず完全黙秘を続けている。この裏には何かがある。警視庁捜査一課の吉敷竹史は、懸命な捜査の結果、ついに過去数十年に及ぶ巨大な犯罪の構図を突き止めた。―壮大なトリックを駆使し、本格推理と社会派推理とを見事に融合させた傑作!
上にある通り、本格推理と社会派推理とを融合させたストーリー仕立てになっている。どちらかというと、「謎解きにしっかりした構造を持つ社会派」というより「社会派のフレーバーを入れた本格推理」。
本格推理の方の側面は、島田荘司的大技トリック炸裂といった感じでとてもよかった。ちょっと荒唐無稽な感じもするが、それくらいがちょうどいいかも。しかも大技一発ではなく、かなり複雑なしくみになっている。
対して社会派の側面はというと、題材としては胸を打つものではあったのだが、それが犯罪と有機的にからみ合っている感じがしなかったのが残念。他の境遇に置き換えても同じような話が作れると思うのである。
「消費税12円」というのは400円のものに対する税金である。当時は税率3%だった。消費税は1989年4月に導入され、1997年4月に5%に引き上げられた。それからさらに12年も経ったのか。