
- 作者: 石持浅海
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/01/08
- メディア: 文庫
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一九九三年、カンボジア。NGOのスタッフが地雷除去作業をつづける荒れ地に、突然の爆発音が轟いた。立入禁止区域に、誰かが踏み入ったのだ。頭部を半分吹き飛ばされた無惨な死体。これは、純然たる事故なのか、それとも―。表題作のほか、本格の旗手・石持浅海の原点ともいうべき「対人地雷」ミステリー全六編と、処女作短編で編まれた第一短編集が待望の文庫化!
対人地雷関係の6編には、ロジックにうならされるものあり、そうでもないものもあり。「対人地雷はどのような目的で使用しても悪となるものであり、廃絶しなければならない」というメッセージは伝わってきた。ただし「対人地雷廃絶のためには何をしてもよい(= 殺人も見逃される)」という雰囲気も醸し出されているのは気になる。
そういう観点でいうと「利口な地雷」や「顔のない敵」は印象的だった。「トラバサミ」は箸休め的な話だが、こりゃいくらなんでも突飛すぎるのではなかろうか。
処女短編「暗い箱の中で」は地雷とは関係のない話。特殊な設定でのクローズドサークルという点では、後に発表される長編と共通している。この設定にはちょっとついていけなかった。後味もよくないし。承知の上でのことだと思うが、この短編を入れることで、短編集としてのまとまりは明らかに悪くなっている。
これで、文庫になっている石持作品は全部読んだはず。