メタな立場からミステリーを描く短編集。そういう意味では「
名探偵の掟」と同じ趣向。大いに笑わせてもらった。
- 超税金対策殺人事件
税金対策に苦悩する作家。この作品は手放しで笑うことができなかった。同じ主旨の筒井康隆のエッセイを読んだ時にも思ったのだが、高額所得者が税金の多さを嘆いているのを聞くのは気分のいいものではない。累進課税で税率が高くなるのはお気の毒ではあるが、それも所得が多いからである。おまけに作家は必要経費が認められるのだから、何を文句を言っているのだという気になる。税金を払う段になって「そんな金はない」? 貯金しとけばいいじゃないか。たくさんもらってるんだから。
...と、サラリーマンは愚痴の1つも言いたくなるのである。
- 超理系殺人事件
「この小説が肌に合わない方は飛ばし読みして下さい」とあったが、意地で全部しっかり読んだ。私は「似非理系人間」の中に入れられそうである。
- 超犯人当て小説殺人事件(問題篇・解決篇)
本格かつメタという作品。こういうのが1つ入っているだけでピリリと辛くなった感じ。
- 超高齢化社会殺人事件
ある有名なミステリー作品を思い出した。同工異曲というわけではないが。
- 超予告小説殺人事件
ちょっと結末が見えた感じ。
- 超長編小説殺人事件
タイトル通り、超長編の話。京極弁当箱シリーズが頭に浮かぶ。「若手の二月堂隼人さんは、総枚数五千枚を超える作品に着手したという話です」というのは二階堂黎人のパロディであるな。他の名前にも実在の作家を意識したものがあるに違いない。
私もミステリーを読み出してから、長い作品が苦にならなくなったということは言える。以前は文庫本で500ページもあると「うへー」と思っていたが。
- 魔風館殺人事件(超最終回・ラスト五枚)
筒井康隆のエッセイに少し似たのがあったのを思い出す。同じ新潮文庫(活字のフォントが独特)で読んでいるから余計に。
- 超読書機械殺人事件
実際の人工知能の世界はこれにはほど遠いな。「他人の書評を参考にはしても鵜呑みにしてはいけない」とまじめなことも考えた。