全脳自由帳

より考えるために書く

断定したくない症候群(1) 半疑問形

最近よく使われる言葉遣いの傾向として、「断定したくない」という(無意識の)意図を感じることがよくある。相手に気を遣っているのか自分が否定されたくないのか、たいてい両方なのだと思うが、できるだけ断定せずにおこうという気持ちを感じることが多いのである。

その代表格とも言えるのが「半疑問形」。

今年は、ふるさと納税? しようかなと思ってるんですよ。返礼品? もらえるのいいかなと思って。肉とかうなぎとか? でも、私の給料でもらえる限度? いくらぐらいいけるかわからなくて、友達に聞いたら、ウェブサイトで? 見ればわかると言われて。

どうも自然な感じで再現できないのだが、こんなしゃべり方。

この言い方の歴史は古く、今やすっかり定着してしまった。もう誰も(私のようなこだわりの強い奴以外には)気にしていないようである。

極端なケースになると、

A: 「娘さん、何年生ですか?」
B: 「中1?

のように、「こっちが聞いとるんじゃ! 自分の娘の学年に自信ないんか!」とツッコミを入れたくなるような答え方をする人がいる。こうなると、気を遣っているのでも否定されたくないのでもなさそうである。

疑問形を入れることによって、ともかく相手に確認しながら、共感してもらいながら話を進められる。そういう気持ちが無意識に働いてこういう言い方をするのだと思っている。

この半疑問形、すごいと思うのは、年配の人にまで広がっていることである。テレビを観ていると、70代や80代の人でも結構この言い方をしている。おそるべし。

検索してみると、1998年のNHKのコラムで「半クエスチョン」として取り上げられている。

www.nhk.or.jp

このコラムでは、

次のようにすれば、「半クエスチョン」を使わなくても済みます。

1. 質問すべきところでは、疑問形を用いた文できちんと質問し、それから本題に入ること。

2. 相手に伝わっているかどうか不安になる原因の1つには、自分の使っている単語・言い回しが難しすぎるのではないか、と気にしていることがあげられます。確実に相手に伝わると自信を持てるくらいの簡潔な表現を目指しましょう。

とあるのだが、もう誰も、使わなくてすむようにしようとは思っていない。そんな問題ではないというところまで定着してしまっている。時代の流れを感じる。