全脳自由帳

より考えるために書く

ダイイング・アイ(東野圭吾)

ダイイング・アイ (光文社文庫 ひ 6-11)

ダイイング・アイ (光文社文庫 ひ 6-11)

1998〜9年に雑誌に連載され、2007年にようやく単行本になった作品。今年になって文庫化された。

雨村慎介は何者かに襲われ、頭に重傷を負う。犯人の人形職人は、慎介が交通事故で死なせた女性の夫だった。怪我の影響で記憶を失った慎介が事故について調べ始めると、周囲の人間たちは不穏な動きを見せ始める。誰が嘘をつき、誰を陥れようとしているのか。やがて慎介の前に妖しい魅力に満ちた謎の女が現れる。女の正体は、人形職人が甦らせた最愛の妻なのか?

大まかにジャンルを分けてしまえば記憶喪失もの。失っていた記憶の背後にあるらしき事実として、かなり信じがたいことが出てくるので、一時は本気で「この作品はミステリーじゃなくてファンタジーなのでは?」と心配したが、そうではなくて安心した。しかししかけはそれほど周到なものではなかったし、スピード感もあまり感じられない。

この作品を気に入るかどうかは、全ての謎の源泉である「あるもの」をどれだけ信じられるかにかかっていると思う。私は、まあそれを前提にした作品があってもいいじゃないかとは思ったが、逆に言えばそこまでのインパクトの作品だという印象。