- 作者: 北山猛邦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/10/15
- メディア: 文庫
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鏡の向こうに足を踏み入れた途端、チェス盤のような空間に入り込む―『鏡の国のアリス』の世界を思わせる「アリス・ミラー城」。ここに集まった探偵たちが、チェスの駒のように次々と殺されていく。誰が、なぜ、どうやって? 全てが信じられなくなる恐怖を超えられるのは…。古典名作に挑むミステリ。
Twitter上のエアミス研で読書会の題材に選ばれたので、おもしろいに違いないと思って読んだら、期待以上だった。「クロック城」「瑠璃城」の2作から急にジャンプした感じを受ける。
北山猛邦といえば物理トリック。どんなものが登場するのかと思いながら読んだのだが、この作品では物理トリックの位置づけが前2作とは大きく異なっているのがよかった。前2作を読んでいなくてもこの作品を読むのに支障はないが、順番に読んでいくとストーリーの中での物理トリックの「使い方」が変わっていくのが味わえる。
殺人の動機はかなり変。しかしあまりゴチャゴチャ言わずに楽しんだ方がいいと思う。そして、メイントリックには言葉もなし。あそこであんなこと、ここでこんなことを言ってたのは... ああ、これ以上は書くまい。
あと、探偵の1人である山根嬢のこのしゃべり方が個人的にはツボ。
「喋り方も変だってよく云われるわ。ごめんなさいね。転倒してるって云われるの。でも転倒というのは正しくないわよね。倒置っていうんだと思う。正しくは。だから時間がかかるでしょう。わたしの喋っていることを理解するのに。いいのよ、気にしないで。慣れてるから。変な人と思われるのは」
ずっとこんなしゃべり方をする人が近くにいたらさぞかし変だろう。
紹介文には「古典名作に挑むミステリ」とある。「鏡の国のアリス」(ルイス・キャロル)にちなんでいるところは結構あるものの、読んでいなくても十分楽しめるはず。私は読んでいたが、それによって楽しみ方が変わった気はあまりしなかった。(※2010.11.17追記: sakatamさんからコメントで指摘をいただいた。「古典名作」というのは「鏡の国のアリス」のことではないのだった... 汗)
残念ながらエアミス研読書会には参加できなかったのだが、あとでWiki上のまとめを見て、大いに楽しむとともに、メタ・ミステリーとしての読み方など、いろいろと目からウロコだった。読書会世話役・まとめ編集者・参加者の方々に感謝。