全脳自由帳

より考えるために書く

有限と微小のパン(森博嗣)

有限と微小のパン (講談社文庫)

有限と微小のパン (講談社文庫)

S&Mシリーズ第10作にして完結編。そしてシリーズ最長作でもある。

舞台は長崎の「ユーロパーク」。明らかにハウステンボスを意識している。「森博嗣のミステリィ工作室」によると、書く前に実際にハウステンボスに行ったらしい。私も行ったことがあるので、イメージはしやすかった。

雰囲気のいい話ではあるものの、密度はちょっと薄かった印象。トリックはまあまあ。しかしシリーズ他作品の質が高いだけに、それらと比べると落ちる気がする。Webの「内容紹介」に「一番書きたかったのは、歴史上最も被害者の近くにいた目撃者」とあって、読んでなるほどとは思ったのだが、大きなインパクトはなかった。

すべてがFになる」で登場した真賀田四季が再登場。この出し方はうまい。一方、これだけの分量で書くなら塙理生哉と萌絵の関係をもう少し掘り下げてほしかった。もったいない。

これでS&Mシリーズを読みきった。なんだかんだいっても、シリーズ後半になってもダレることなく、むしろ後半の方が質の高い作品が読めた気がする。これら10作を3年もかからずに書いたのだからすごい人である。次はVシリーズに挑戦するか。