全脳自由帳

より考えるために書く

Zの悲劇(エラリー・クイーン)

Zの悲劇 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

Zの悲劇 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

新年最初の感想はこれ。巷で言われている通り、「Xの悲劇」「Yの悲劇」に比べると今ひとつおもしろみに欠ける話だった。

「X」「Y」から10年あまり経った設定で、サム(元)警視の娘ペーシェンス・サムの一人称で語られるのだが、この人の役割がどうも明確でない。メインの探偵役であるわけではないし、かといって助手に徹しているわけでもない。途中で「あなたたちの目は、ふし穴同然ですわ!」と言ってのけておきながら実質何も指摘できなかったのにはがっかり。ラブロマンスっぽいものも出てくるがそれも中途半端。

そしてドルリー・レーンがすっかり老いてしまっているのが残念。こういうふうに描く意図は何かあったのだろうか。真相に達するまでの苦悩もレーンらしくない。「X」「Y」の時のように真相を知って悩むのならいいが、真相がつかめなくてバタバタと動き回るのは彼にふさわしくないと思うのである。弁護士に小切手を渡すシーンには幻滅してしまった。

そして、ドラマがない。真犯人が示された時も「まあ、登場した人たちの中ではこの人ぐらいになるのかな」と思っただけで、驚愕するとか感動するとかにはほど遠かった。クイーンにしてはロジックがしっかりしていないし。ついでに言うと、タイトルの「Z」の由来も「X」「Y」よりさらに弱い。

というわけで否定的なコメントばかりになるのだが、悲劇シリーズ最後の「ドルリイ・レーン最後の事件」までは読むつもりである。