- 作者: 麻耶雄嵩
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1998/08
- メディア: 文庫
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首なし死体が発見されたのは、雪が降り積もった夏の朝だった!20年前に死んだはずの美少女、和音(かずね)の影がすべてを支配する不思議な和音島。なにもかもがミステリアスな孤島で起きた惨劇の真相とは?メルカトル鮎の一言がすべてを解決する。新本格長編ミステリーの世界に、またひとつ驚愕の名作が誕生!
長い話だった。文庫版で700ページあまりというその量以上に。読み続けるために必要となる意志の強さからすれば「暗黒館の殺人」より上だったかも。と言いながら結構楽しんで読めたのだが、推理小説を読み始めたころなら途中でやめていたかもしれない。
謎に対する答が明示的な形では提示されないとは聞いていたものの、終盤の展開には唖然とするばかりだった。わけがわからないのは夏に雪が降ることだけではない。如月烏有が途中で吐く「いったい何なのだ...」というセリフは、読者にもそうつぶやけということだろう。
説明のつかない幻想小説として理解すべきなのかと思ったが、そうではないらしい。この作品の謎にはきちんとした解答がつけられるはずだという。「黄金の羊毛亭」の書評の「ネタバレ感想」でそのあたりを勉強した(ありがとうございます)。なるほど...そういう真相が隠されていた(と考えられる)のか。
多少の無理には目をつぶって、これは傑作である。それと、キュビスムというものの基礎知識を得られたのも収穫だった。普段絵を鑑賞したりすることのない私でもバルセロナのピカソ美術館には2回行ったことがあるのだが、キュビスムがどういうものか全く知らずにピカソの絵を見ていた。これからは少しだけでも見る目が変わりそうである。