
- 作者: 小島寛之
- 出版社/メーカー: ベストセラーズ
- 発売日: 2011/02/08
- メディア: 新書
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第1部は、人の身に起こるいろんな問題について。ゲーム理論的な話から入るのだが、「人間の行動が、実行直前になると前に決めていたこととは違ってしまう」とか「動こうとするとその方向が悪い方向に見える」(ダウ&ワーラン効果)などの、人間の心理にまで踏み込んだ話もあって興味深い。
第2部は「幸せな社会とは」がテーマ。現代社会らしく「環境」の話から、制度学派による「社会的共通資本」の概念などの解説へ。ここでも、経済学が発展するに従ってだんだん人間の心理により深く踏み込んでいくことがわかる。作者が支持している制度学派や宇沢弘文という人が現在経済学界でどういう位置にいるのかはわからないが。
ここまではとてもわかりやすかった。しかし第3部にはガッカリ。「村上春樹の小説に数学的思考の技術を使って挑む」というもので、私のように村上春樹作品を読んだことのない人間には、内容が全く理解できない。完全においてけぼり。「村上作品を題材にして数学的思考を解説する」のではなく、あくまで「村上作品を評する」ことが主眼になっているので、読んだことがなければさっぱりわからないということになる。
第2部までは誰にでもわかりやすい内容になっているのに、第3部は限定された人(広めに見積もっても、村上春樹を読んだことのある人)にしかわからない内容。そのアンバランスが残念だった。