全脳自由帳

より考えるために書く

六人の超音波科学者(森博嗣)

六人の超音波科学者 (講談社文庫)

六人の超音波科学者 (講談社文庫)

Vシリーズ第7作。

土井超音波研究所、山中深くに位置し橋によってのみ外界と接する、隔絶された場所。所内で開かれたパーティに紅子と阿漕荘の面々が出席中、死体が発見される。爆破予告を警察に送った何者かは橋を爆破、現場は完全な陸の孤島と化す。真相究明に乗り出す紅子の怜悧な論理。美しいロジック溢れる推理長編。

メイントリックにさほど新味はないと思うのだが、陳腐な感じは全くしない。それだけ話の持って行き方が巧み。普通の人間には推理できないようなしかけも、味つけとして効果的に活かされている。

さらに、シリーズ中の話としてうまく位置づけられているのだと思う。紅子と七夏との間の緊張感もすっかりおなじみ。このシリーズは特に、1作目から順に読んでいくのがオススメ。ただし本作ではレギュラー陣4人が4人とも大活躍というわけではなかった。

研究分野としてなぜ「超音波」を採り上げたのかは結局よくわからない。分野は違えど作者も(元)研究者なので、研究者の生き方や考え方をもっと濃密に描いてほしかった。自分に関わりが深かったり好きだったりするものはサラリと描くのが森流なのかな。「数奇にして模型」しかり、「魔剣天翔」しかり。