- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/06/10
- メディア: 文庫
- 購入: 11人 クリック: 254回
- この商品を含むブログ (284件) を見る
1991年4月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。謎を解く鍵は記憶のなかに―。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。「犬はどこだ」の著者の代表作となった清新な力作。
マーヤがいる間のいくつかの「日常の謎」と、ユーゴスラビアへ帰ってからの「最大の謎」。前者はどれもそれほど気の利いたものではなく、後者も謎解きとしては複雑なものとは感じられなかった(謎解きの「趣向」としてはユニーク)。一番の謎は、それほど日本語が達者でないと思えるマーヤが時々やたら難しい単語や言い回しを知っていることか。ともかく、この作品は謎解きに注目するのではなく、小説として物語全体を味わうものだという気がする。
1991年に始まったユーゴスラビア紛争はもちろん覚えているのだが、恥ずかしながらあまり詳しいことは知らなかった。それを勉強するよい機会になった、というだけでなく、心に大きな余韻を残す物語ではあった。扉の紹介文には「清新なボーイ・ミーツ・ガール・ミステリ」という書き方がしてあるのだが、それはちょっと軽すぎる。