- 作者: 天藤真
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2000/07/21
- メディア: 文庫
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三度目の刑務所生活で、スリ師戸並健次は思案に暮れた。しのぎ稼業から足を洗い社会復帰を果たすには元手が要る、そのためには―早い話が誘拐、身代金しかない。雑居房で知り合った秋葉正義、三宅平太を仲間に、準備万端調えて現地入り。片や標的に定められた柳川家の当主、お供を連れて持山を歩く。…時は満ちて、絶好の誘拐日和到来。三人組と柳川としの熱い日々が始まる!
おもしろいおもしろいとは聞いていたが、本当におもしろかった。誘拐ものというのは、卑劣な犯罪であるということとその構造(誘拐→犯人からの連絡→身代金授受をめぐる攻防、被害者の安否)からだいたい似たような感じの話になるというイメージがあったのだが、こんな奇想天外な誘拐小説が作れるとは。そしてこんなにさわやかに仕上げられるとは。結末のまとめ方も文句なしである。
それにしても、彼ら自身「最高の知恵が要る犯罪」と言っていた誘拐のもともとの計画とはどういうものだったのだろう。どうもすぐに破綻するようなお粗末なプランだったように見えるのだが。それが全く違う展開を見せるところがこの作品の魅力であるとも言える。
この人の作品を他にも読んでみたくなる。幸いにして創元推理文庫から「天藤真推理小説全集」が出ている。やれやれ、続けて読みたい作家がまた増えてしまった。