全脳自由帳

より考えるために書く

死角に消えた殺人者(天藤真)

天藤真の作品を読むのはこれで9冊目。1976年の作品。

驟雨に洗われた坂道を疾走し、三途の闇に向かって崖縁を飛び越えた真新しいブルーの車体。星影もない暗夜の出来事は、翌朝の陽光に惨たらしい名残をさらす―。千葉県銚子の景勝屏風浦で非業の最期を迎えた四人は、謀殺の犠牲と断じられるにも拘らず、生前の交友関係を推し量るべくもない。当局の捜査は次第に昏迷の度を加え、徒に日を送るばかり。そして事件発生から一月…

事件の設定は天藤作品らしい奇妙なもの。殺人の状況を今ひとつよく理解できなかったのが残念だった。中盤はなかなか進展がなくて、ちょっと間延び。終盤には天藤作品らしい意外性が仕込まれている。

色恋を軸として読むと変な話なのだが、「あとがき」にも少し書かれている通り、「身近な人のことをどれだけ理解できているのか」がこの作品の本当のテーマらしい。そちらに注目して読むと、独特の文体と併せて結構楽しめる。