- 作者: 石持浅海
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2008/02/08
- メディア: 文庫
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久しぶりに開かれる大学の同窓会。成城の高級ペンションに七人の旧友が集まった。(あそこなら完璧な密室をつくることができる―)当日、伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。何かの事故か?部屋の外で安否を気遣う友人たち。自殺説さえ浮上し、犯行は計画通り成功したかにみえた。しかし、参加者のひとり碓氷優佳だけは疑問を抱く。緻密な偽装工作の齟齬をひとつひとつ解いていく優佳。開かない扉を前に、ふたりの息詰まる頭脳戦が始まった…。
犯人が最初からわかっている倒叙ものである。そして傑作である。どう傑作かのヒントはタイトルにある。登場人物に開示されている情報がこれだけ少ない状況で推理を成立させるというのはすごい。
難点を挙げるなら「犯行動機に説得力がない」「人物や人間関係の描写が薄い」というところか。前者については、私ならこの立場になっても殺さないと断言できるが、まあ人それぞれということで。後者は気になるのだが、人間関係の深いところを書いていくとどうしても長くなっていくので、それを抑えて推理の過程の描写に集中したとみることもできる。
長編推理小説には長いものが多い中、これだけの内容を300ページちょっとで完結させているところには意味があり、多くの人に薦められる作品だと思う。それだけに、最後の「前夜」という章はなくてもいいような気がするが。