米中毒別館

思いついたことをこまごまと。本の感想なども。

花嫁のさけび(泡坂妻夫)

花嫁のさけび (ハルキ文庫)

花嫁のさけび (ハルキ文庫)

古本屋で見かけ、「湖底のまつり」「妖女のねむり」とタイトルの感じが似ているのでなんとなくよさそうだと思って手にとった。

「わたし、本当に今幸せなのよ。これ以上、何もいらないの。早馬さんだけがいればいいの」―映画スター・北岡早馬との結婚で伊津子は幸せの絶頂にあった。しかし彼女を迎え入れた北岡家の人々は皆、早馬の先妻・貴緒のことが忘れられぬ様子であり、最愛の夫もその例外ではなかったのだ。謎の自殺を遂げたという貴緒の面影が色濃く残る邸で、やがて悲劇の幕が切って落とされる…。技巧の限りを尽くした本格ミステリー。

期待した通り、泡坂ミステリー独特の妖しい雰囲気の中で物語は進む。特に「この世のものではないほど美しい人だった」という早馬の亡妻・貴緒の影が妖しさを彩る。まわりが遠慮会釈もなく貴緒を礼賛する環境で、新妻・伊津子の身に何が起こるのか。波乱の末に幸せになるのか、それとも最後に悲劇が待っているのか。終章の前の五章「花嫁の叫び」はどういう「叫び」なのか...。

そんなことをずっと考えながら読み進めると、その五章で唖然とさせられた。これだけ驚かされたのは久しぶり。巧妙に張りめぐらされた伏線と計算された演出は期待以上である。

この作品の設定は、ヒッチコックにより映画化された「レベッカ」(原作: ダフネ・デュ・モーリア)をベースにしているということを読後に知った。これを観るか読むかしていたらさらに楽しめたかもしれない。

ちょうど昨日、sakatamさん「花嫁のさけび」感想が更新(改稿)されていた。ここでの解説がすばらしい。加えてネタバレ感想(当然、本作をすでに読んだ人向け)での分析はさすが。「なるほど、そういう技巧がこらされていたのか」と改めて膝を打った。

泡坂妻夫はこれで6作読んだが、全てよかった。それなのに絶版になっているものが多いのは本当に残念。亡くなられたのを契機にといっては何だが、天藤真広瀬正のような復刊の動きがあってほしいものである。