「食わず嫌い王選手権」や「人志松本の○○な話(ゆるせない話, 好きなものの話...)」を観ていると、タレントでもないのに「自分なら何を出すか、どんな話をするか」と考えてしまうものだが、「好きなものの話」ならまず「アルプスの少女ハイジ」である。
このアニメ、もちろん好きな人は多いと思う。私も何度も観ていて、以前WOWOWで全話放送されたのをDVDに録画して持っている。しかしかねがね不満に思っていることがある。「テレビの特番で紹介されるシーンがなぜいつも『クララが立った!』なのか」ということである。
私にとって「ハイジ」はあくまでハイジとおじいさん(アルムおんじ)の話である。二人の暮らしや関係にこそ物語の全てがある。そんな中で私が文句なしに一番の名シーンだと思っているのは、第34話「なつかしの山へ」での、ハイジとおじいさんの再会シーン。
その前(第18話)、デーテおばさんの計略によりハイジはフランクフルトに連れて行かれてしまう。やっとハイジと心が通じ合えていたおじいさんの悲嘆はいかばかりか。一方ハイジはフランクフルトで新たな友達クララに出会うが、結局アルムの山恋しさのあまり夢遊病になってしまう。そこで医者の勧めにより山に帰ってくるわけである。
第34話では、ハイジは執事セバスチャンに連れられて汽車でスイスに帰る。デルフリ村の人たちに挨拶したあと山を登ってペーターの家を訪れ、ペーターのおばあさんにみやげの白パンをあげてから、なつかしの我が家に向かう。
かつてよくしていたように服を脱ぎ捨て、山の斜面を駆け上がるハイジ。ヨーゼフが鳴いて走り寄る。ふと家の方を見ると、おじいさんが立ってこちらを見ている。時間が一瞬止まる。「おじいさん!」駆け寄るハイジ。「ハイジ!」おじいさんはハイジをしっかりと抱きしめるのだった...。
このシーンは涙なくしては観られませんぞ。それに比べれば、クララが立ったか立たないかなどというのはオマケみたいなもの、と言って悪ければ「いくつもあるよいエピソードの1つ」にすぎない...と感じている人は他にいないのだろうか。
まあ、特番でしつこいほど紹介されて手垢にまみれてしまうより、観たい時にひそかに楽しめる方が幸せなのかもしれない。