全脳自由帳

より考えるために書く

殺人の門(東野圭吾)

殺人の門 (角川文庫)

殺人の門 (角川文庫)

久しぶりに小説の感想を書く。2003年の作品。

「倉持修を殺そう」と思ったのはいつからだろう。悪魔の如きあの男のせいで、私の人生はいつも狂わされてきた。そして数多くの人間が不幸になった。あいつだけは生かしておいてはならない。でも、私には殺すことができないのだ。殺人者になるために、私に欠けているものはいったい何なのだろうか? 人が人を殺すという行為はいかなることなのか。直木賞作家が描く、「憎悪」と「殺意」の一大叙事詩

つらかった。とにかく暗い。ものすごく悲惨なわけではないが、不幸なことばかりが続く主人公。その話がこれでもかとばかりに細かく描かれる。これで600ページ超はつらかった。ラストの展開も「今ごろそれを…」という感じだったし。

読み終わってみると、この話には「愚かな人」しか出てこなかった。男女問わず、誰をとっても愚かなふるまいばかり。ちょっと前に読んだ東野作品「ゲームの名は誘拐」は「善人の出てこない小説を書きたかった」と作者が言っている通りだったが、「殺人の門」は「賢い人の出てこない小説」だった。

作中の年代がいつなのかははっきりとわからなかったが、どうやら1985年に相次いで起こった「豊田商事事件」「投資ジャーナル事件」が反映されているらしい。

スターバックスのコーヒーが苦手な理由が(なんとなく)わかった

一人でカフェに入るのは好きな方で、外で少し時間ができるとコーヒーを飲みながら本を読んだりちょっとした調べものをしたりしながら過ごすことが多い。

カフェの売上高では、スターバックスドトールが二強らしい。そして最近はローソンやセブンイレブンなどのコンビニでも豆を挽いたコーヒーを飲めるようになってきた。私はドトールには比較的よく行くし、コンビニのコーヒーも割と好きなのだが、スタバにはまず行かない。理由は単純で、あのコーヒーが苦手なのである。やたら苦味だけが残って、とてもおいしいとは思えない。ほとんどホットコーヒーしか注文しない私には、コーヒーの味が合わないのは致命的である。

「あんなまずいコーヒー、なんでみんな飲んでるの?」とまわりの人に聞いてみると、「まずいよな」と諸手を挙げて賛成してくれる人はごく一部だった。まあそもそもコーヒーはあまり飲まないという人も(特にスタバでは)多いと思うが、飲む人でもほとんどの人はまずいとは感じていないらしい。逆に「あの味がいいんですよ」という人もいた。

なるほど好みの問題なのかなと思っていたら、分析してくれている記事があった。

人間の味覚に近い感覚を数値化できる「味覚センサー」で各社のコーヒーを分析した結果がグラフにプロットされている。これを見ると、スタバのコーヒーはダントツで「コク」の数値が高くて、「苦味」もかなり高い。ドトールは全く逆で、あっさりしていてかつ酸味が強い。コンビニ系のコーヒーは苦味の数値が高めで「コク」はそれほどでもない。

こうして見ると、どうやら私は「コク」のあるコーヒーがダメなようである。それがわかっただけで、何か対策があるわけではないのだが、スタバのコーヒーは特別な味だということがわかってすっきりした。スタバに入らないといけない時は、これまで通りソイラテか何かを飲むことにしよう。

要求通りの目覚まし時計が見つからない

最近、iPhoneを寝床に持ち込むのをやめた。

目覚まし時計を兼ねて、寝る時にはいつもiPhoneを横に置いていたのだが、ちょっと寝つけないとついついiPhoneでなんだかんだ見てしまう。明らかに睡眠時間をロスしている。寝る前に液晶画面を眺めるのは安眠の妨げになるという話もある。

やってみると快適である。「もう寝るしかない」という状況はいい。昔はずっとそうだったはずで、めでたくそこに戻ることができた。

そのために、目覚まし時計を新しく買うことにした。どんなものがほしいかと考えてみると、要求仕様は以下の5点。

  • 電波時計である
    今時、これは必須でしょう。時刻を補正する必要がないというのは大きい。
  • アナログの針がついている
    夜中に目が覚めた時に、針の方がわかりやすい。まあこれまでiPhoneのデジタル表示でやってきたのではあるが、わざわざ目覚まし時計を買うなら針はほしい。
  • アラームの時刻をデジタルで合わせられる
    電波時計であるからには、アラームが鳴る時刻もピッタリ合わせたい。針では正確にならないので、アラーム合わせだけデジタルでやりたい。
  • スヌーズ機能あり
    割と寝起きのいい方ではあるのだが、一応間隔をおいて複数回鳴らしてほしい。
  • 秒針のコチコチ音がしない
    実はこれが一番大事。コチコチ音がすると寝られないのである。ホテルに泊まる時にも、部屋の時計からコチコチ音がするときは電池を抜いて寝る(朝起きてから戻して時刻を合わせる)ということをしているぐらい、とにかく気になる。そういう人は結構いるようで、最近は「連続秒針なので寝る時に音が気にならない」ことをうたった時計が増えてきた。

いろいろ検索してみても上記の仕様を全て満たす目覚まし時計はなかなか見つからなかったのだが、唯一この時計がいけそうだった。

「秒針停止機能(アラームON時)」ということは、アラームONにした時だけコチコチ音が止まるということらしいが、ちょうどエディオンの店頭で見かけたので、まあこれでいいだろう(安いし)ということで購入。

説明書を見てみると、秒針停止は「アラームON時に、アラーム時刻の約8時間前から止まります」とのこと。これは微妙な仕様。8時間以上寝たい時は、我慢して秒針の音を聞きながら寝るか、8時間後にアラームを設定して一度起きないといけないことになる。普段8時間以上寝ることはほとんどないが、体調がよくない時にはそういうこともあるのでちょっと困る。また、アラームなしで少し横になりたい、という時もいちいちどこかの時刻にアラーム設定しないといけない。

そもそも「秒針停止機能」ではなくて「連続秒針」にしてくれればいいし、それだとコストが高くつくというのならいっそ秒針なんかなくてもいいのだが。なかなか要求通りの商品というのはないものである。

買い直すとしたら、「アナログ針つき」をあきらめてデジタル表示だけのもの、もしくは液晶で針を疑似表示したものになると思う。どうするか思案中である。

負けたらゴミを拾わないという人は勝っても拾わない

サッカー・ワールドカップ(W杯)ブラジル大会で、日本―コートジボワール戦の観戦を終えた日本人サポーターが、客席のゴミを片づける画像が世界に広まり、各国の主要メディアから称賛されている。
ブラジルの有力紙「フォーリャ・デ・サンパウロ」(電子版)は15日、北東部レシフェで14日行われた試合の終了後に始まったゴミ拾いについて、「日本は初戦を落としたが、礼儀の面では多くのポイントを獲得した」と報道した。
英紙インデペンデント(電子版)は16日、「日本の観衆がワールドカップの会場でゴミを集めたことは他国のサッカーファンにショックを与えた」と伝え、ゴミ拾いの様子の写真2枚も掲載した。
韓国の聯合ニュースは16日、日本人サポーターについて「敗北の衝撃に包まれながらも、破壊的な行動をせず、ゴミを拾い始めた」と指摘。画像は、中国のインターネット・ニュースでも伝えられ、国営新華社通信の中国版ツイッター「微博」には、「中日関係は落ち込んでいるが、日本のいい伝統は学ぶ価値がある」などの書き込みがあった。
サポーターによる観客席のゴミ拾いは、日本がW杯に初出場した1998年フランス大会から行われている取り組みだという。試合中にスタンドで膨らませて応援する青い袋を、試合後はゴミ袋として活用した。

負けてもゴミ拾い…世界が称賛、日本サポーター - 読売新聞

日本サポーターの「試合後にゴミを拾う」という活動はすばらしいと思う。
この件の報道でもう一つ興味を持ったのは、各紙とも「負けても」ゴミを拾っていたということを強調した見出しになっていること。

私の感覚では、試合観戦の後でゴミを拾うかということに関して、

  1. 勝っても負けてもゴミを拾う (← 日本サポーター)
  2. 勝っても負けてもゴミを拾わない
  3. 勝ったらゴミを拾うが、負けたら拾わない

のうち、世の中には1か2の人がほとんどで、3の人はほとんどいないだろうと思うのである(ちなみに、「4. 負けたら拾うが勝ったら拾わない」人はもっといない)。ゴミは拾うべきという倫理観(あるいは習慣)を持った人なら、負けた後でも拾うだろう。

ところが記事の見出しはいずれも「勝ったら拾うかもしれないけど、負けても拾うというのはエライ」というトーンになっているように見える。そこにどうも違和感がある。負けたら拾わないという人は勝っても拾わないんじゃないのか。

いや、そう思うことこそが日本人的な感覚で、外国人から見れば3は全く普通の感覚なのだろうか。

木製の王子(麻耶雄嵩)

木製の王子 (講談社文庫)

木製の王子 (講談社文庫)

2000年の作品。如月烏有や木更津悠也が登場するシリーズ。

比叡山の麓に隠棲する白樫家で殺人事件が起きた。被害者は一族の若嫁・晃佳。犯人は生首をピアノの上に飾り、一族の証である指環を持ち去っていた。京都の出版社に勤める如月烏有の同僚・安城則定が所持する同じデザインの指輪との関係は? 容疑者全員に分単位の緻密なアリバイが存在する傑作ミステリー。

分単位のアリバイ、どう崩すか? 興味はまずそこに行くのだが、その後に何とも奇妙な、バカバカしい真相が待っている。麻耶作品ならそれもありだと思えるのではあるが。

最後の最後に、なぜかミステリー小説によく登場する「あるもの(というか、属性)」が出てきて、「またか」と思わされた。好みの問題ではあるが、他に何かなかったのかという気持ちは残る。

奇面館の殺人(綾辻行人)

奇面館の殺人 (講談社ノベルス)

奇面館の殺人 (講談社ノベルス)

前作から6年、館シリーズ第9作。執筆の状況が作者のTwitterで語られていたりしたので、これは文庫化までとても待てない。ノベルズで購入。

奇面館主人・影山逸史に招かれた六人の男たち。館に伝わる奇妙な仮面で全員が“顔”を隠すなか、妖しく揺らめく〈もう一人の自分〉の影…。季節外れの吹雪で館が孤立したとき、〈奇面の間〉に転がった凄惨な死体は何を語る? 前代未聞の異様な状況下、名探偵・鹿谷門実が圧巻の推理を展開する!
名手・綾辻行人が技巧の限りを尽くして放つ「館」シリーズ、直球勝負の書き下ろし最新作。

これまでの館シリーズに漂っていた怪しい感じは減じているが、この作品は「奇面館」という変わった趣向を単純に楽しむべきだと思う。

真相究明のポイントとなるロジックは全くわからなかったし、それに加えて披露される「驚愕の事実」の脱力加減も気持ちいい。変な事実なのだが、作者が意識的にやっていることを伝えてきているので許そう。

途中で鹿谷門実が披露する「あるもの」にはニヤリとさせられた。

非常食をそろえる (2)

前回のエントリで「非常食定期宅配サービスyamoryはサービスをやめてしまうらしい」と書いたのだが、新年1月5日からサービスを再開するようである。株式会社R-proが業務を引き継ぐとのこと。どんなサービスになるのか注目していたい。

さて、非常食を自分でちゃんと管理するのにあたって、何を備蓄しておくか検討した。が、結局、まずはYamoryで提供されている標準セット(今はもうYamoryのページでは見られなくなっているが)を買っておくことにした。3日分で以下のセットを家族4人分そろえた(数字は1人分)。

  • レトルトごはん: 6食
    ごはん好きな我が家では多めにしておこうと思い、「サトウのごはん 新潟産コシヒカリ」の36個セットを楽天で購入。
  • レトルト食品(カレー、ハヤシ、シチューなど): 6食
    近所のスーパーで見繕って24個購入。同じものばかりだと飽きると思うのでなるべくバリエーションを持たせる。
  • レトルト雑炊・おかゆ: 3食
  • 缶詰(魚類、肉類など): 3缶
  • ジュース(野菜・フルーツ200ml): 3パック
  • ガム(キシリトール入り): 1個
    これら4つも近所のスーパーで購入。
  • 水: 2l: スーパーで買ってくるのは重い。Amazonが安いのでそっちで購入。2lのペットボトル9本のセットにした。
  • 発熱剤
    レトルト食品を温めるのに必要。1人あたり10個ぐらいはほしいので、モーリアンヒートパック(L)を楽天で42個購入。水をかけると発熱するタイプ。

3日ならこれでもつと思う(3日でいいのかどうかには議論があると思うが)。あとは保管場所を決めて置いておくことと、それぞれの賞味期限を管理して、切れそうなものから消費して新しいものを買うこと(賞味期限が一番早くくるのはジュースである)。あと、発熱剤のテストをしておかないといけない。

凶鳥の如き忌むもの(三津田信三)

「まがとりのごときいむもの」。2006年、刀城言耶シリーズ第2作。

凶鳥の如き忌むもの (講談社ノベルス)

凶鳥の如き忌むもの (講談社ノベルス)

「怖さ」という点では第1作「厭魅の如き憑くもの」ほどではなかったが、ライトな気持ち悪さとゆったりした進行とがあいまってまた違ったいい感じを醸し出している。

メイントリックは一瞬だけ頭に浮かんだのにすぐ捨ててしまっていた。やられた。周辺のトリックはかなり微妙というか、刀城言耶があまりにも千里眼すぎる印象を持ってしまうのだが、微に入り細に入り(のつもりで)行われる前半の検討と組み合わせると、これがまたいい味を出している。

苦労したのは島や建物の構造の理解。というより、全くのお手上げ。図面がないので、最後までさっぱりわからなかった。それでもストーリーを理解することはできるが、図はほしい。文章だけで構造を把握できる人はいるのだろうか?

この作品はずっと文庫になっていなかったのでしかたなく講談社ノベルス版を買ったのだが、今年10月にひょっこり文庫になっていた。ちょっと悔しい。

凶鳥の如き忌むもの (講談社文庫)

凶鳥の如き忌むもの (講談社文庫)

非常食をそろえる (1)

ちきりんさんTwitterでのつぶやきから知ったのだが、「非常食定期宅配サービスyamory」というのがある。災害時用の非常食を6ヶ月ごとに宅配してくれるというサービス。賞味期限が切れる前に次のが配達されるので、そのたびに前のを食べて新しいのに入れ替えておけば常に賞味期限内のを蓄えておくことができる。

我が家にも非常食を少しは置いているが、ちゃんと管理していない。それを反省するとともに、どうせなら普段食べている食事になるべく近い、おいしいものを備蓄しておくべきだと思った。災害時のガスや電気が使えない状態では、熱湯の必要なラーメンなどは厳しいが、発熱剤を用意しておけばレトルト食品の加熱ぐらいはできる。特に大事なのは米。一時しのぎであってもちゃんと米を食べたい。乾パンではダメである。

というわけでこのyamoryに登録しようとしたのだが、間もなくサービスをやめてしまうようである。

  • 非常食の定期宅配事業からの撤退のお知らせ: 防災ブログ 非常食の定期宅配サービスyamory (※2012.12.31追記: このリンクはなくなっていた)

残念。このサービスが成り立たないのは、非常食の常備に対して意識の高い人(自分で準備する人)が多いからではなくて、その逆だろう。

それならばと、これを契機に非常食を自分でちゃんと管理することにした。yamoryのメニューを参考にして、災害時に家族全員がしのげる食料を買っておき、賞味期限が来る前に買い替えて前のは食べる、というサイクルをきちんとまわすことにしたい。

続く。

四季 春(森博嗣)

四季 春 (講談社文庫)

四季 春 (講談社文庫)

S&Mシリーズにも登場する真賀田四季を描いたシリーズ(だと思う)の第1作。

天才科学者・真賀田四季。彼女は五歳になるまでに語学を、六歳には数学と物理をマスタ、一流のエンジニアになった。すべてを一瞬にして理解し、把握し、思考するその能力に人々は魅了される。あらゆる概念にとらわれぬ知性が遭遇した殺人事件は、彼女にどんな影響を与えたのか。圧倒的人気の四部作、第一弾。

作者が紹介ページの中で「『四季』という1つの作品です。ですから、本当はシリーズではありません」と書いているように、この「春」で何かの区切りがついた感じはあまりない。殺人事件を主軸として話が展開するわけではないから、ミステリーとして解決しても1つの話が終わった気はしない。

どうやらこのシリーズは本格的なミステリーではなくファンタジー寄りの路線のようだし、私は真賀田四季にそれほど思い入れがないので、あと3冊読むのはちょっとしんどいなと思い始めている。でもこれ1冊読んだだけでは何もわかっていない状態で終わりそうである。「冬」まで読み終わった時に何を感じられるかを楽しみにしながら読み進めることにしよう。