
細野晴臣インタビューTHE ENDLESS TALKING (平凡社ライブラリー)
- 作者: 細野晴臣,北中正和
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2005/09/01
- メディア: 単行本
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タイトル通り、全編がインタビュー。エイプリル・フールやはっぴいえんどから始まって1990年ごろまで、どの時代の話をしても、細野氏の懐の深さを感じさせられる。世界中のいろんな音楽を吸収する貪欲さ、音楽を創る姿勢に見られる純粋さ、また、コンピュータの導入に見られるような先見性と自由な発想。まさに日本の音楽の一角を牽引してきた人だという印象を強く受ける。それに、インタビュアーの北中氏(音楽評論家)の理解が非常に深いことが読み取れ、また細野氏の発言を自然に引き出している。
特に印象的だったのは、コンピュータを音楽に使うことに対して細野氏が全く否定的な感情を持っていなかったらしいこと。それと、日本のポピュラーミュージックでコンピュータを使うことが定着するのにYMOのアルバム「BGM」が果たした役割の話。
――YMOが単独で状況を変えたわけではないと思うんですが、シンセサイザーを使ったポップスの一つの方法論を提出したのはたしかですね。
細野 おそらく『BGM』あたりのやり方が残ったんだと思うんですよ。それまではテクノというのは特殊な単純性を持ってて、クラフトワークのような独特の単純な音楽だったんですけど、『BGM』は非常に複雑に作ってあって、コンピューターが、テクノロジーというよりも、レコーディングとか曲作りのテクニックの中に奥深く溶け込んでいて。もう一度もとに戻っちゃったというかな、音楽的なニュアンスが。そこらへんでコンピューターが普遍性を持ち出したというか、定着したんだなと思います。いつまでもピコピコやってたら、きっと消えちゃったと思うんです。
YMOについては複雑なところがあるらしい。
――YMOは、どういうふうに総括すればいいのか難しいですね。
細野 僕もうまくいえないんです。結局、正常な状態じゃないですから。いまは正常ですからね、そのころのことが理解できないんですよ。ある意味では異次元なんですね。違う時間帯を経験してて。例えば男と女の人が恋愛して別れたりするときっていうのはパニックになるわけです。そういう経験は、やってみた人はわかると思うけど、コントロールのきかない自我が出てくるんですね。温厚な紳士が取り乱したりとかあるわけで、どんなにおとなしい人もパニックの中では全開していく。自分をフルに出していかなくちゃいけないし、自分の弱いところとか限界とかを見せつけられることもあるだろうし。
YMOのインタビュー集「イエロー・マジック・オーケストラ(第2版)」も読んでみたくなる。
久しぶりにCDラックから細野氏のソロデビューアルバム「HOSONO HOUSE」を出してきて聴いた。ポップないい曲ばかり。何度も再生してしまったのだった。