- 作者: 外山滋比古
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1986/04/24
- メディア: 文庫
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アイディアが軽やかに離陸し、思考がのびのびと大空を駆けるには?
自らの体験に則し、独自の思考のエッセンスを明快に開陳する、恰好の入門書。
考えることの楽しさを満喫させてくれる本。
文庫本のあとがきに代わる巻末エッセイ“「思われる」と「考える」”を新たに収録。
硬い本なのではないかと思っていたのだが、意外に読みやすかった。印象的だったのは以下の2つの話。
- エディターシップと触媒
一からの創作を第一次的創造とするなら、既存の情報を組み合わせ、加工して新しい価値に昇華させるのが第二次的創造、メタ・クリエイション。物語でいえば「デカメロン」や「源氏物語」。これらは「知のエディターシップ」。
俳句では、生々しい主観が出てくるのを嫌う。優れた句では、俳人の主観を受動的に働かせて、表れる様々な素材が自然に結び合うのを許す場を提供する。触媒のような働き。このようなことはエディターシップにおいても見られる。第二次的創造は触媒的創造。
触媒的であるためには無心であることが望ましい、ある意味で没個性的なのがよい、ということも書いてあって、深い。この部分は少し時間をおいて読み返したい。
- 手帳、ノート、メタ・ノート
手帳に何でも書き出す。いつでも持ち歩いて、思いついたことは書く。書いたらいったん忘れて寝かせる。
ある程度時間の経ったところで手帳を見返す。別のノートを準備し、手帳の中で脈のあるアイデアを移していく。
そのノートに寝かせていたことを、もう一度別のノート(メタ・ノート)に移す。コンテクストを変えてやることによって新しい生命の展開が期待できる。
大変なようだが、デジタル版ノートを使えば少し楽になりそう。倉下さんのエントリ(シゴタノ!)が参考になる。そちらでは1つの例として
- メモ → Twitterでのつぶやき
- ノート → ノートアプリ
- メタ・ノート → Blog
とされているが、メモは手段を限定しない方がいいので、手書きでもノートアプリでも何でもいいことにするのがいいと思う。あとでスキャンするなどして全てを1箇所に集めることも可能だし。メタ・ノートはブログという、割ときっちりした形にする必要のあるメディアが向くと思う。
この本では、「思いついたことはいったん忘れる、醗酵させる、寝かせておく」ということが繰り返し強調されている。「見つめるナベは煮えない」という言葉が象徴的。