全脳自由帳

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「どうぶつしょうぎ」で遊ぶ

どうぶつしょうぎ

どうぶつしょうぎ

女流棋士の作ったゲーム「どうぶつしょうぎ」(ルール考案: 北尾まどか、イラストデザイン: 藤田麻衣子)。前から存在は知っていたのだが、実物を見たことはなかったし、ルールも知らなかった。iPhone/iPod touch/iPad用アプリが出たので、この機会にとiPhoneにインストールして指してみた。

これは簡単でおもしろい。4×3の盤面を使い、駒はライオン・ぞう・きりん・ひよこの4種類。それぞれ本将棋の玉・角(ただし動けるのは1マスだけ)・飛車(これも1マスだけ)・歩のような動きをする。ひよこが敵陣1段目に入ると、成長してにわとり(金と同じ動き)になる。敵ライオンを取るか、自ライオンが敵陣1段目に入る(トライ)かで勝ち。

コンピュータ(iPhone)との対戦もできる(今のところ、私でもほぼ毎局勝てるぐらい弱い)のだが娘とも対戦してみた。本将棋と違って駒の動かし方を覚えるのに時間がかかったりすることはない。子供でもすぐに楽しめるようによくできている。

ところで、どうぶつしょうぎは二人・零和・有限・確定・完全情報ゲームなので、双方が最善を尽くしたときに「先手必勝」「後手必勝」「引き分け(千日手: 同一局面3回で成立)」のいずれになるかが理屈の上では決まっているはずである(→ 昔書いたエントリ)。盤面が狭くて駒の種類・数も少ないから、解析の計算量はそれほど多くないはず。野暮な話だとわかっていても結論がわかっているのかどうかを知りたくなる。

調べてみると、果たして解明した人がいた。関連記事。

後手必勝だという結論が出ているとのこと。双方が最善を尽くせば78手で後手勝ちとなるそうである。

詳細を書いた論文も公開されている。

この論文によると、初形から到達可能な局面の総数は約2億5千万で、そのうち勝負がついていない局面は約1億。

興味深かったのは、先手の可能な初手4通りのうち、一番よく指されると思われるひよこを取り込む手(B2 ひよこ)が一番早く先手負けになるということ。他の3つだと双方最善で78手までねばれるが、この手だと76手で先手が負けてしまう。

それと、論文でも強調されているが、敵陣1段目へのひよこ打ち(本将棋では1段目の歩打ちは禁止されているがどうぶつしょうぎではOK)が唯一の勝ち筋となる局面が存在するというのもおもしろい。

神様の結論がわかっても、娘と指す時の楽しさは変わらない。先手で最初にひよこを取り込む時に「神様相手だと負けを早める手」だということをちょっと思い出すかもしれない、という程度である。