
- 作者: ミチオカク,Michio Kaku,斉藤隆央
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2006/01/21
- メディア: 単行本
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「ここ2ヶ月間くらいで読んだ本 - Neko’s Business Law」で「ランクS」として紹介されていたのを見て読むことに。
ブラックホールへの決死の旅や、タイムマシン、もうひとつの宇宙、そして多次元空間―本書は宇宙論の世界を席捲する革新的な宇宙の姿を鮮やかに描き出す。今日、ひも理論とその発展理論であるM理論は圧倒的な支持を得て、世界の名だたる物理学者や天文学者が、最先端の波検出器、重力レンズ、衛星、天体望遠鏡を動員し、多宇宙(マルチバース)理論の検証に取り組んでいる。もしパラレルワールドが存在するのなら、いつかこの宇宙が暗く凍ったビッグフリーズを迎えるとき、われわれの未来の先進文明は、次元の「救命ボート」によってこの宇宙を脱出し、パラレルワールドへと至る方法を見つけるであろう。
序盤は宇宙論の歴史。サイモン・シンの"BIG BANG"と共通しているところは多いが、背景放射探査衛星のうちCOBE(1992年)だけでなくWMAP(2001年)の成果についても詳しく書いてあるので、ダークマターやダークエネルギーについても多めに触れられている。
WMAPによれば、宇宙の物質/エネルギーの23%はダークマター、そして実に73%がダークエネルギーらしい。見えない物質と虚空のエネルギー。未だに宇宙の大部分は人類にとって得体の知れないもので占められているということになる。
ひも理論、M理論は中盤で解説されている。もともとちゃんと理解するのは無理だとわかってはいるものの、以前読んだ「はじめての〈超ひも理論〉」ではわかった気にもなれなくてガッカリした(「超ひも理論とはなにか」は最初の方で挫折して積読)のだが、この本の解説は非常にわかりやすかった。「なぜひもなのか?」「なぜ11次元なのか?」という問いの答をおぼろげながらもイメージすることができる。それと、インドの天才数学者ラマヌジャンのノートでひも理論につながることが研究されていたというのは驚きだった。
他の章も驚きの連続。現代の物理学者は、タイムトラベルの可能性や、この宇宙が冷えきった熱的死(気の遠くなるほど先の話だが)を迎える前に他の宇宙へ逃げ出す方法について真剣に考えているのである。このあたりの解説もとてもわかりやすい。著者自身が理論物理学の最先端にいる学者だからというのもあるのかもしれない。
人間原理の話から、神/創造主の存在に関する諸説。物理学の舞台で大マジメに議論されている。どんな学問も突き詰めると哲学的・宗教的な方向へ行くということなのか。
すぐ忘れるのでメモ。宇宙の「うまく調整されすぎている」6つのパラメータは以下。
- ビッグバンの核融合で水素がヘリウムになる際にエネルギーに転換される質量の割合 ε
- 電気力/重力 N
- 宇宙の相対密度 Ω
- 宇宙定数(宇宙膨張の加速度) Λ
- 宇宙マイクロ波背景放射のばらつき振幅 Q
- 空間次元 D
マルチバース(多宇宙)は、この宇宙があまりにもうまく作られていることに関する説明としては有力なように感じる。
最初から最後まで、とにかく宇宙論に興味のある人にはオススメの内容。日本語訳も無理なく読める自然なものになっている。